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高尿酸血症・痛風

高尿酸血症・痛風について

高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が7.0mg/dL以上となる状態を指します。尿酸は、体内でプリン体という物質が分解される際に生成される老廃物です。通常、尿酸は主に尿として体外に排出されますが、排出が滞ったり、体内で過剰に作られたりすると、血液中に尿酸が溜まってしまい、高尿酸血症となります。

高尿酸血症は、自覚症状がほとんどないことが特徴ですが 、この状態が長く続くと尿酸が結晶化して関節などに蓄積し、「痛風発作」と呼ばれる激しい痛みを引き起こすことがあります。痛風は「風が当たっただけでも痛い」と表現されるほどの強い痛みが数日間続くのが特徴です。

高尿酸血症・痛風の原因

高尿酸血症や痛風の発症には様々な要因が関係しています。

  • 遺伝的要因:尿酸が体外に排出されにくい体質や、尿酸が過剰に作られやすい体質は遺伝することが報告されています。
  • 食生活
    • プリン体の過剰摂取:プリン体は肉類(特にレバーなどの内臓肉)や魚介類(干物、青魚など)に多く含まれています。これらの食品を過剰に摂取すると、体内の尿酸が増加する原因となります。
    • 過度な糖質制限:無理な糖質制限により、肉や魚の摂取が増えることで尿酸値が上昇することもあります。
  • アルコールの過剰摂取:特にビールにはプリン体が多く含まれており、体内で尿酸に分解されるため、控えめにすることが重要です。
  • 肥満:肥満は体内で作られる尿酸の量を増やす原因となります。
  • 水分摂取不足:水分が不足すると尿酸の排出が滞りやすくなります。

高尿酸血症の患者様の約8割が高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病を合併していると報告されており、高尿酸血症自体も動脈硬化につながる疾患です。

高尿酸血症・痛風の症状について

高尿酸血症の段階では、ほとんど自覚症状がありません。そのため、健康診断などで初めて指摘される方も少なくありません。

しかし、尿酸値が高い状態が続くと、以下の症状が現れることがあります。

  • 痛風関節炎(痛風発作)
    • 最も典型的な症状で、足の親指の付け根に発生することが多いですが、手、肘、肩、腰、膝など体中の関節にも起こりえます。
    • 関節が赤く腫れ、歩行が困難になるほどの激しい痛みを伴います。
    • 発作の初期は一時的な痛みで治まることが多いですが、再発を繰り返すたびに痛みが長時間続くようになります。
    • 慢性化すると、「痛風結節」と呼ばれる関節のしこりが生じることもあります。

高尿酸血症が引き起こす合併症

高尿酸血症を放置すると痛風発作だけでなく、様々な合併症のリスクが高まります。

  • 慢性腎臓病:腎臓の働きが悪化する病気で、初期は自覚症状がありません。悪化すると夜間頻尿、息切れ、倦怠感、貧血、むくみなどを引き起こします。さらに進行すると「腎不全」となり、人工透析が必要になる場合もあります。
  • 尿路結石:尿中に尿酸の結晶ができ、腎臓から尿管、膀胱、尿道へと移動する際に、背中やわき腹に強烈な痛みが生じることがあります。
  • 生活習慣病との関連:高尿酸血症は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった他の生活習慣病と併発しやすく、これらの合併により動脈硬化を進行させるリスクを高めます 。動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気、さらには脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)のリスクも上昇させます。

受診を強く推奨する症状や状況

以下のような症状や状況が見られた場合は、早期に医療機関を受診してください。

  • 関節に激しい痛みや腫れがある(痛風発作が疑われる場合)
  • 健康診断で尿酸値が高いと指摘されたが、まだ医療機関を受診していない
  • 背中やわき腹に激しい痛みがある(尿路結石の可能性がある場合)
  • むくみ、息切れ、倦怠感が続くなど、腎機能低下が疑われる症状がある
  • 家族に痛風や腎臓病の人がいる

当院は内科、整形外科、脳神経内科が連携しているため 、痛風発作、しびれ、めまい、頭痛など、関連する症状についても包括的に診療を行うことが可能です。

高尿酸血症・痛風の診断と検査について

高尿酸血症は自覚症状がないことが多いため、血液検査によって診断されます。

  • 血液検査:血液中の尿酸濃度を測定します。尿酸値が7.0mg/dLを超える場合に高尿酸血症と診断されます。痛風発作が起きている期間は正確な尿酸値を測定できないことがあるため、症状が落ち着いている時に検査を行うことがあります。
  • 尿検査:尿酸の排出量が少ないか、尿酸の産生が増えていないかを確認するために行われます。

高尿酸血症・痛風の治療法について

高尿酸血症・痛風の治療は、主に生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行われます。治療の目的は痛風発作の予防や、腎臓病、尿路結石などの合併症を防ぐことです。

食事療法

  • プリン体の摂取量を控える:肉類や魚介類、特にレバーや干物などプリン体を多く含む食品の過剰摂取に注意が必要です。1日のプリン体総摂取量が400mgを超えないように心がけましょう。
  • バランスの取れた食事:過度な糖質制限は尿酸値の上昇を招く可能性があるため、脂質、タンパク質、炭水化物、野菜をバランスよく摂ることが大切です。
  • 水分を積極的に摂る:脱水症状を防ぎ、尿酸の排出を促すため、お茶や水など糖分を含まない飲み物を積極的に摂りましょう。特に夏場は脱水になりやすく、痛風発作を起こしやすいため注意が必要です。
  • アルコールの制限:特にビールは控えることが重要です。患者様によって制限内容は異なりますが、一般的に日本酒1合、ビール350~500ml、ウイスキー60ml程度までが目安とされています。

運動療法

  • 有酸素運動を推奨:適度な運動は肥満の予防や生活習慣の改善につながりますが、高尿酸血症の方は無酸素運動などの過度な運動を短時間で行うと、かえって尿酸値を上げてしまう可能性があります。ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど、会話ができる程度の有酸素運動が推奨されます。
  • 肥満の改善:肥満の方は減量することで体内で作られる尿酸の量を減らすことができます。

薬物療法

薬物療法は、以下のような場合に検討されます。

  • 痛風発作の経験がある方 
  • 目立った症状がなくても尿酸値が9mg/dL以上の方 
  • 尿酸値が8mg/dL程度でも、メタボリックシンドローム、糖尿病、狭心症、尿路結石、腎障害、高血圧などが併発している方 

主な薬の種類には、尿酸が作られるのを防ぐお薬や尿酸の排出を促すお薬があります。尿酸値を6mg/dL以下に保つことを目標とします。ただし、急激な尿酸値の低下は痛風発作を誘発する可能性があるため徐々に下げていくことが重要です。

痛風発作時の治療:発作が起きている時は、まず炎症を抑えることが優先されます。消炎鎮痛剤(NSAIDs)などを用いて痛みを和らげ、発作が落ち着いてから尿酸値を抑える治療を開始します。

治療の継続:高尿酸血症は非常に治癒しにくい疾患であり、薬の服用を中止すると尿酸値はすぐに元の状態に戻ってしまうことがあります。長期間放置すると合併症のリスクが高まるため、根気強く服用を続けることが大切です。

よくある質問

Q1. 高尿酸血症は男性に多いと聞きましたが、本当ですか?

A. はい、その通りです 。女性ホルモンには尿酸の排泄を促す作用があるため、女性は高尿酸血症になりにくいとされています 。しかし、女性の患者数も年々増加傾向にあります。

Q2. 痛風発作が起きたら、どうすればいいですか?

A. まずは安静にし、患部を冷やして炎症を抑えることが重要です。無理に動かしたり温めたりすると痛みが悪化することがあります。市販の痛み止めである程度対応できる場合もありますが、激しい痛みが続く場合は早めに当院の内科または整形外科を受診してください。痛風発作中は尿酸値を下げる治療は行わず、まず発作の症状を改善させることを優先します。

Q3. 健康診断で尿酸値が高いと言われました。自覚症状がないのですが、病院に行くべきですか?

A. はい、自覚症状がなくても医療機関を受診することをお勧めします。高尿酸血症は放置すると痛風発作だけでなく、腎臓病や尿路結石、動脈硬化などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。早期に生活習慣の改善や必要に応じた治療を開始することでこれらのリスクを低減できます。当院の健康診断・人間ドックでも高尿酸血症のチェックが可能です 。

Q4. 尿酸値を下げるために、食事で特に気を付けることはありますか?

A. プリン体を多く含む食品(レバー、干物、一部の青魚など)の過剰摂取は控えましょう。また、アルコールの摂取、特にビールは尿酸値を上げやすいため飲みすぎに注意が必要です。水分をしっかり摂り、バランスの取れた食生活を心がけてください 。

Q5. 薬を飲んで尿酸値が下がりました。薬をやめても大丈夫ですか?

A. 高尿酸血症は、薬の服用を中止すると2週間程度で尿酸値が元の状態に戻ってしまうことが多い疾患です。尿酸値を下げる薬は腎臓の働きが悪くなるのを抑えたり、痛風発作を減らしたりする効果も期待できます。自己判断で薬の服用を中止せず、必ず医師にご相談ください。

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