頸椎症
頸椎症について
頸椎症とは、頭を支える首の骨である「頸椎」や、骨と骨の間でクッションの役割を果たす「椎間板」が加齢などにより変形することで起こる病気です。この変形によって、首や肩の痛み、手のしびれなど、様々な症状が引き起こされます。
症状について
頸椎症で現れる症状は、変形によって圧迫される神経の場所によって多岐にわたります。代表的な症状は以下の通りです。
首・肩の症状
- 首の痛み、こり
- 肩の痛み
- 肩甲骨の内側や脇の下あたりの痛み
腕・手の症状
- 腕や手のしびれ、痛み(特に首や肩から腕、手指にかけて)
- 指のしびれ
- 手の脱力感、力が入りにくい(握力の低下など)
- 細かい作業がうまくできない(箸を使う、字を書くなど)
- 手や指のこわばり
- 冷え
- 異常な発汗
その他の症状
- めまい(動作によって脳へ続く血管が圧迫される場合)
- 疲れやすい、疲れが取れない
- 歩きにくい、脚が突っ張るような感じ
- 排尿や排便障害(まれに)
頸椎症の考えられる原因
頸椎症の主な原因は、加齢による頸椎の変形です。一般的に40歳代頃から変形が始まり、年齢を重ねるごとに変化が大きくなる傾向があります。
また、以下のような要因も頸椎に負担をかけ、頸椎症の発症や悪化に繋がることがあります。
- 不良姿勢: 特に猫背で頭が前に突き出た姿勢は、頸椎に大きな負担をかけます。頭が30度前に傾くだけで、頸椎にかかる負担は4倍にもなると言われています。
- 慢性的な筋肉の収縮: 悪い姿勢が続くと、頭を支えるために首周りの筋肉が常に緊張し、固くなってしまいます。この慢性的な筋肉の収縮も、椎骨の隙間を狭め、神経を圧迫する原因となります。
- 生活習慣: デスクワークやスマートフォンの長時間使用など、同じ姿勢を続けることの多い生活習慣も、頸椎に負担をかける要因となります。
- 寝具: 枕の高さが合っていないことも、首に負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります。特に、仰向けで低い枕を使用すると、首が反った形になり、神経への圧迫が増強されることがあります。
- ストレス: ストレスが多い方も、首周りの筋肉が固くなりやすく、発症リスクが高まることがあります。
症状が悪化する状況
首を後ろに反らしたり、上を見上げたりする姿勢で痛みやしびれが悪化することがあります。また、首を左右に回したり傾けたりすることでも症状が誘発されることがあります。仰向けやうつぶせで寝る、同じ姿勢を長時間続けることも症状の悪化に繋がりやすいため注意が必要です。逆に、手を頭の上にのせると症状が緩和されることもあります。
片側に症状が現れることが多いですが、まれに両側に現れることもあります。
頸椎症の診断と検査について
当院では、患者様の症状を正確に把握し、適切な治療方針を決定するために、様々な検査を行います。
- 問診: 症状について詳しくお伺いします。いつから、どのような時に症状が出るのか、悪化する要因や緩和される要因などを丁寧に聞き取ります。
- 身体診察・理学検査: 首の動きや痛み、しびれの範囲などを確認します。
- ジャクソン検査: 首を軽く後ろに曲げて頭部を上から押します。
- スパーリング・テスト: 首を症状のある方向へ強く傾けながら頭部を押します。 どちらの検査でも上腕に痛みが生じた場合、頸椎症の可能性が高いと考えられます。
- 頸椎伸展テスト: 首を後ろに反らした際に、腕から手指にかけてのしびれや痛みが増強するかを確認します。
- 画像検査:
- レントゲン検査(X線検査): 頸椎の骨の変形や椎間板の隙間が狭くなっているかなどを確認します。当院ではデジタル撮影により、画像を即時に確認・説明できます。
- MRI検査: 神経根や脊髄の圧迫状態をより詳しく調べるために行います。脳梗塞や脳腫瘍など、他の病気の鑑別にも役立ちます。当院では、不安を早く解消したいというニーズに応え、午前中のご相談で当日中にMRI検査が実施できる場合があります。
- CT検査: 骨折の詳細な評価や、脊椎や関節の状態を立体的に把握するのに有用です。
- エコー検査(超音波検査): 筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織の状態をリアルタイムで観察し、神経の状態や関節の炎症などを評価できます。
- 神経伝導速度検査(NCS)、筋電図(EMG): 手足のしびれや筋力低下の原因を詳しく調べるために、末梢神経の伝導速度や筋肉の電気活動を測定することがあります。
頸椎症の治療法について
頸椎症の治療は、症状の程度や患者様の状態に合わせて、様々な方法を組み合わせて行われます。多くの場合、まずは保存的治療(手術以外の治療)から開始し、症状の緩和を目指します。
保存的治療(一般的な治療法・自宅でのケア)
- 薬物療法:
- 非ステロイド性消炎鎮痛薬(痛み止め): ロキソニン、セレコックス、ボルタレンなど、炎症を抑え痛みを和らげる薬が処方されます。
- 筋弛緩薬: ミオナール、リンラキサー、テルネリンなど、筋肉のこりをほぐす薬が使用されます。
- 神経痛を軽減する内服薬: リリカ(プレガバリン)など、神経性の痛みに特化した薬が使われることもあります。
- 激しい痛みに対する薬: トラマールやトラムセットなど、より強い鎮痛作用を持つ薬が処方される場合もありますが、副作用に注意が必要です。
- リハビリテーション:
- 牽引療法: 首を軽く引っ張ることで神経の通り道を広げ、症状を緩和します。
- 物理療法: ホットパックによる温熱療法や電気治療などを行い、痛みやこりの緩和を図ります。
- 運動療法・姿勢指導: 首に負担がかからない姿勢や動作の指導、頸椎周囲の筋肉の柔軟性を高めるストレッチや筋力強化運動などを行います。当院では、不良姿勢や慢性的な首の筋肉の収縮に焦点を当てたリハビリテーションも行っております。
- 装具療法: 痛みが非常に強く、首の動きを制限する必要がある場合に、首を固定するカラーを使用することがあります。
- 自宅でのケア:
- 安静: 強い痛みが続く場合は、無理な動作を避け、安静にすることが大切です。
- 姿勢の改善: 日常生活での姿勢に注意し、特にスマートフォンやパソコンを使用する際は、首に負担がかからないように工夫しましょう。
- 適切な枕の使用: 首が反った姿勢にならないよう、適切な高さの枕を選ぶことが重要です。一般的には高い枕が良いとされていますが、個人差があるため、ご自身に合った枕を見つけることが大切です。
- 温める: 首や肩を温めることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎます。
注射治療
- 神経ブロック注射: 強い痛みがある場合、痛みを起こしている神経の周りに直接薬を注入することで、痛みや炎症を抑え、過敏になっている神経を落ち着かせます。当院では、薬物療法などで十分な効果が得られない場合や、できるだけ早く痛みを解消したいという場合に、神経ブロック注射での治療も可能です。
手術療法
保存的治療を続けても症状が改善しない場合や、筋力低下や排尿・排便障害などの神経症状が進行する場合、手術が検討されることがあります。当院では、神経ブロックや手術が必要と判断された場合は、近隣の脊椎外科専門医(岐阜市民病院、岐阜大学病院、松波総合病院など)をご紹介しています。
よくある質問
Q1. 頸椎症はどのような人がなりやすいですか?
A1. 40歳代以降の方に多く見られますが、最近ではスマートフォンの長時間使用による不良姿勢(スマホ首)が原因で、20代、30代での発症も増えています。デスクワーカー、姿勢が悪い人、長年肩こりがある人、寝違えを繰り返している人、ストレスが多い人などもなりやすい傾向があります。
Q2. 頸椎症と頚椎椎間板ヘルニアは違う病気ですか?
A2. 頸椎症は、加齢による骨の変形(骨棘)が神経を圧迫することで症状が現れるのに対し、頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板(軟骨)が飛び出して神経を圧迫することで症状が現れます。原因は異なりますが、どちらも神経の圧迫による症状が出るため、症状や診察だけでは区別がつきにくい場合もあります。正確な診断にはMRI検査が有用です。
Q3. 症状がなくなれば完治したと考えて良いですか?
A3. 痛み止めなどの薬で一時的に症状が治まっても、原因となっている不良姿勢や首の筋肉の固さが改善されていない場合、症状が一時的になくなっているだけで、根本的に治癒しているわけではありません。骨棘がさらに成長したり、神経への圧迫が続いたりすることで、症状が再発したり、より重症な頸椎症性脊髄症を発症したりする可能性があります。
Q4. 自宅でできる対処法はありますか?
A4. 痛みがひどい場合は無理せず安静にし、首や肩を温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を和らげることができます。また、首に負担がかからない姿勢を心がけ、ご自身に合った枕を使用することも大切です。ただし、自己判断せず、症状が続く場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。
Q5. どのような症状が出たら受診を検討すべきですか?
A5. 首の痛みや肩こりが長く続く、手や腕にしびれや痛みがある、力が入りにくい、めまいがするといった症状がある場合は、一度ご相談ください。特に、症状が徐々に悪化する、手足の脱力感が強い、排尿・排便障害を伴うなどの場合は、早急な受診が必要です。神経はダメージを受け続けると破壊される可能性がありますので、慢性的な症状が現れたら早めに当院の受診をおすすめします。