捻挫・靭帯損傷
捻挫・靭帯損傷について
足関節捻挫は、足首の関節を構成する靭帯や関節包といった軟部組織が、無理な力が加わることで損傷する状態を指します。スポーツ活動中はもちろん、日常生活での階段の踏み外しなど、身近な状況でも容易に発生する可能性があります。特に、足首を内側に捻ることによって生じる「内反捻挫」が多く見られます。足関節は全体重を支える重要な部位であるため、捻挫を放置すると、痛みが長期化したり、足首の不安定性が残ったりして、その後の治療が難航することがあります。初期段階から適切な診断と治療を受けることが重要です。
捻挫・靭帯損傷の症状について
足関節捻挫の症状は、損傷の程度によって異なります。
グレード1:軽症
靭帯が軽く伸びる程度の損傷で、足首の前の部分や外くるぶしの下あたりに軽度の腫れや押すと痛む圧痛が現れます。歩行は可能ですが、放置すると足関節が弱くなり、捻挫を繰り返しやすくなることがあります。
グレード2:中等症
靭帯の一部が切れてしまった状態です。外くるぶしの広範囲に腫れと圧痛が見られ、関節の不安定さはあまりないものの、歩けても走ることは困難な場合が多いです。
グレード3:重症
靭帯が完全に切れてしまった状態です。外くるぶしの周囲に強い腫れ、圧痛、そして皮下出血が現れます。関節の不安定性が著しく、自力で体重を支えられないため、歩行が非常に困難または不可能になります。また、足首の可動域の制限も認められます。
捻挫・靭帯損傷の診断と検査について
足関節捻挫の診断は、問診や触診(徒手検査)によって行われることが多いです。しかし、骨折など他の疾患との鑑別や、靭帯損傷の正確な状態を把握するために、画像検査を組み合わせて行います。
当院では、患者様の状態に応じ、以下の検査を行います。
- 問診・触診: 症状の詳しい状況や、足首を捻った時の状況などについて詳しくお伺いします。触診では、外くるぶしの前や下、広範囲にわたる圧痛や腫れの有無を確認します。
- X線検査(レントゲン): 骨折の有無を確認するために実施します。靭帯損傷が高度に疑われる場合、関節にストレスをかけた状態でレントゲン撮影を行い、関節の緩みを確認することもあります。
- 超音波検査(エコー検査): 骨折がない場合に、レントゲンでは映らない筋肉、腱、靭帯の損傷や内出血、組織の炎症を確認するために行います。関節を動かしながらの検査が可能で、リアルタイムで組織の状態を評価できます。
- MRI検査: 靭帯や軟骨の損傷をより詳細に確認するために用いられます。重度の捻挫や他の関節損傷が疑われる場合、または手術が必要と判断される可能性がある場合に実施することがあります。MRI検査が必要と判断された場合には、当院の院内MRIまたは提携医療機関をご紹介させていただきます。
捻挫・靭帯損傷の治療法について
足関節捻挫の治療は、損傷の程度や時期によって異なりますが、受傷直後の応急処置が非常に重要です。ほとんどの捻挫は保存的治療で治癒可能ですが、重症の場合には手術が必要となることもあります。
応急処置(RICE処置)
足関節を捻った直後には、患部の出血、腫れ、痛みを抑えるために以下の「RICE処置」を行います。
- Rest(安静): 患部を動かさず安静に保ち、損傷した靭帯が回復する時間を確保します。
- Ice(冷却): 氷や保冷剤で患部を冷やします(冷たい湿布では十分ではありません)。1回20分程度を1日数回行い、腫れと痛みを軽減します。
- Compression(圧迫): 弾性包帯やテーピングで足首を圧迫し、腫れを抑え、靭帯をサポートします。
- Elevation(挙上): 足を心臓よりも高い位置に挙げることで、腫れや内出血を抑えます。
保存的治療
1度捻挫や2度捻挫のほとんどは、最小限の「保存的治療」で治癒可能です。
- 安静・固定: RICE処置に引き続き、損傷の程度に応じてテーピング、サポーター、シーネ(添え木)固定、またはギプス固定を行います。軽症であれば2~3日程度、中等症・重症の場合には数週間患部を安静に保ちます。適切な固定と安静期間を設けることで、関節の不安定感が残ったり、捻挫を繰り返したりすることを防ぎます。
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬や湿布が処方されることがあります。
- リハビリテーション: 安静期間後、早い段階から運動療法や物理療法などのリハビリテーション治療を開始し、機能・筋力低下を予防し、早期復帰を目指します。理学療法士の指導のもと、ストレッチ、筋力トレーニング、バランストレーニングなどを段階的に行います。特に、足首周囲の筋肉を強化し、再発予防に努めます。当院では、医師と理学療法士が連携し、「積極的保存療法」に力を入れています。
よくある質問
Q1: 足関節捻挫(靭帯損傷)では、病院に行った方が良いのでしょうか?
A1.はい。足関節捻挫は、適切な診断と治療を必要とする疾患です。スポーツ時だけでなく、日常生活でも起こりやすく軽視されがちですが、損傷の程度は軽度の緩みから靭帯の完全断裂まで個人差があります。初回受傷時にきちんと治療しないと、関節の不安定さが残り、捻挫を繰り返す「捻挫がクセになった」状態になる可能性があります。まずは応急処置としてRICE処置を行い、その後すみやかに当院のような整形外科を受診することをおすすめします。特に、痛みで歩けない、足を引きずるなどの症状がある場合は、すぐに受診してください。
Q2: 足関節捻挫(靭帯損傷)を治療した後のスポーツ復帰時期について教えてください。
A2.スポーツへの復帰時期は、患者様の年齢、捻挫の重症度、行っているスポーツの内容によって異なりますが、目安は以下の通りです。
- 軽症(グレード1): RICE処置後、数日程度でスポーツ復帰できるケースがあります。
- 中等症(グレード2): RICE処置後、3週間程度で足首にサポーターなどの装具を付けながらのスポーツ復帰が可能です。
- 重症(グレード3): ギプス固定後、装具を付けながら可動域の改善や筋力回復のリハビリを開始し、受傷から約4~6週間後より軽い運動を始めます。競技特性に合わせたリハビリを続け、平均して術後約8~12週間でのスポーツ復帰を目指します。
自己判断での早期復帰は再発のリスクを高めるため、医師や理学療法士の指導のもと、段階的に運動量を増やすことが大切です。
Q3: 足関節捻挫(靭帯損傷)の予防法を教えてください。
A3.足関節捻挫を予防するには、足首の柔軟性と、足首の安定性を高める筋力・バランス能力が重要となります。以下のポイントに注意すると良いでしょう。
足に合った歩きやすい靴を履く: 靴紐のある靴、足に合ったサイズ・かかとの低い安定感のある靴を履いて、身体のバランスを正しく取りながら歩くようにしましょう。
日頃から足首まわりのストレッチ・筋力トレーニングを行う: 足首を回したり、アキレス腱やふくらはぎを伸ばしたりすることで足関節の可動域が広がり、柔軟性が向上します。また、タオルギャザー(タオルの上に足を置き、足の指でたぐり寄せる運動)で足の指を鍛えると、踏ん張る力やバランス能力の向上が期待できます。スポーツをする前には、必ずウォーミングアップ(準備運動)をしっかり行いましょう。