スポーツ外傷・障害
スポーツ外傷・障害について
スポーツ外傷とは、一度の強い力によって突発的に発生する怪我の総称です。例えば、転倒や接触、ジャンプの着地時などに起こるものがこれにあたります。一般的に「ケガをした」という場合、多くはこのスポーツ外傷を指します。
スポーツ障害は、身体の一部を繰り返し使いすぎること(オーバーユース)によって徐々に痛みや炎症が生じる慢性の症状です。筋力や柔軟性の不足、不適切なフォーム、疲労の蓄積などが背景にあることが少なくありません。
スポーツ外傷・障害の症状について
スポーツ外傷の主な症状
スポーツ外傷は、発生した瞬間に痛みや腫れ、機能の制限を伴うことが特徴です。
- 捻挫(ねんざ): 関節をひねることで靭帯や関節包が損傷した状態です。足首に多く見られ、痛みや腫れが生じます。
- 肉離れ(にくばなれ): 筋肉が急激に収縮したり伸ばされたりすることで、筋肉の繊維が部分的に、あるいは完全に断裂した状態です。太ももやふくらはぎに多く、強い痛みや腫れ、皮下出血が見られます。重度の場合は歩行が困難になることもあります。
- 骨折(こっせつ): 強い衝撃により骨が折れたりヒビが入ったりした状態です。痛み、腫れ、熱感を伴います。捻挫だと思っていたら骨折していたというケースもあるため、早めの受診が大切です。
- 打撲(だぼく): 強い衝撃で筋肉や血管が損傷した状態です。患部の痛み、腫れ、熱感を伴います。
- 靭帯損傷(じんたいそんしょう): 膝などに大きな負荷がかかることで、靭帯が傷つく状態です。痛みや腫れ、可動域の減少、膝の不安定感などが見られます。
- 脱臼(だっきゅう): 関節を構成する骨同士の位置関係がずれたり、外れたりすることです。肩関節など可動域の広い関節に起こりやすく、強い痛みと関節の変形を伴います。
スポーツ障害の主な症状
スポーツ障害は、初期には運動中にのみ痛みを感じ、休むと症状が和らぐことが多いですが、進行すると安静時にも痛みが続くようになります。
- ジャンパー膝(しつがいけんえん): ジャンプ動作の繰り返しで膝の骨と靭帯の連結部に炎症が起こり、痛みが出ます。バスケットボールやバレーボールなどでよく見られます。
- ランナー膝(腸脛靭帯炎): 長距離ランニングによって膝の外側に痛みが生じます。
- シンスプリント: 脛の骨の内側に痛みが出る症状で、長距離ランナーやサッカー・バスケットボールをする中高生によく見られます。疲労の蓄積や硬い地面での練習などが原因となります。
- 疲労骨折: 一度の大きな力ではなく、同じ部位に繰り返し負荷がかかることで骨に小さなヒビが入る骨折です。足の甲や脛の骨に多く、運動時や圧迫時に痛みを感じます。
- 野球肩: 腕を繰り返し大きく動かすことで肩関節周囲に痛みが出ます。不適切なフォームが原因となることもあります。
- ゴルフ肘(内側上顆炎): ゴルフのスイングやテニスのフォアハンドなどで肘の内側や前腕に痛みが出ます。
- テニス肘(外側上顆炎): テニス以外にも、手首を動かす動作の繰り返しで肘の外側に痛みが出ます。
- アキレス腱炎: 足首の酷使によりアキレス腱に炎症が起こり、痛みが生じます。
- オスグッド・シュラッター病: 成長期のお子様に多く、膝のお皿の下の脛骨(すねの骨)が徐々に突出して痛みが起こります。ジャンプやランニング動作の多い競技で発生しやすいです。
スポーツ外傷・障害の考えられる原因
スポーツ傷害の原因は多岐にわたります。
スポーツ外傷の主な原因
- 外的要因: 他の選手との接触、転倒、用具や施設との接触など、一度に強い力が加わること。
- 急激な動作: ジャンプの着地、急な方向転換、全力疾走など、瞬間的に大きな負荷がかかる動作。
- 疲労の蓄積: 疲労により判断力や反応、筋の耐久性が低下していると、偶発的な外傷のリスクが高まります。
スポーツ障害の主な原因
- オーバーユース(使いすぎ): 練習や試合における肩、肘、膝、脚・足などの使いすぎが主な原因です。
- 筋力・柔軟性の不足: 身体の特定の部位の筋力が不足していたり、柔軟性が低下していたりすると、特定の部位に負担が集中しやすくなります。
- 不適切なフォーム: 身体に負担のかかる間違ったフォームでの運動は、特定の部位への過度なストレスとなり、障害を引き起こします。
- 疲労の蓄積: 十分な休養や睡眠がとれていないと、疲労が回復せず、身体の組織の修復が追いつかなくなり、障害のリスクが高まります。
- 不適切な環境: 自分に合わない靴や道具の使用、硬い地面での練習なども原因となることがあります。
- 身体のアライメントの異常: 骨や関節の形や並び(アライメント)に異常があると、特定の筋肉にストレスがかかり、障害を引き起こすことがあります。
スポーツ外傷・障害の診断と検査について
当クリニックでは、患者様の症状や状態に合わせて、以下のような検査を組み合わせて正確な診断を行います。
- 問診・触診: 症状の経過や痛みの部位、スポーツ歴などを詳しくお伺いし、患部の状態を丁寧に確認します。
- レントゲン検査: 骨折の有無や骨の変形、関節の状態などを確認する基本的な画像検査です。
- CT検査: レントゲンでは分かりにくい微細な骨折や、骨の形状を詳細に評価できます。脊椎や関節の状態を立体的に把握することも可能です。
- MRI検査: 骨だけでなく、靭帯、半月板、腱、軟骨、神経などの軟部組織の損傷や炎症を詳しく調べることができます。脳神経内科との連携により、迅速な検査が可能です。
- エコー検査(超音波検査): 筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織の状態をリアルタイムで観察でき、肉離れや腱鞘炎、靭帯損傷、微細な骨折の評価に有用です。放射線被ばくの心配がないため、繰り返し行うことも可能です。
- 神経伝導速度検査(NCS)・筋電図(EMG): 手足のしびれや筋力低下の原因が、神経の障害なのか、筋肉自体の病気なのかを特定するために行われます。
スポーツ外傷・障害の治療法について
当クリニックでは、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療法をご提案します。
一般的な治療法
- 安静・固定: 患部を安静に保ち、必要に応じてテーピングやギプスなどで固定し、損傷部位の回復を促します。
- 薬物療法: 痛みや炎症を和らげるために、内服薬や外用薬(湿布など)を処方します。
- 物理療法: 温熱療法や電気療法などを用いて、血行促進や痛みの緩和を図ります。
- リハビリテーション: 痛みが落ち着いてきたら、理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニングなどの運動療法を開始します。関節の可動域改善、筋力回復、バランス能力向上を目指し、スポーツへの早期復帰と再発予防に取り組みます。当院はリハビリテーション科も併設しており、専門的なサポートが可能です。
- 注射療法: 痛みが強い場合や炎症がなかなか引かない場合に、患部に直接、痛み止めや炎症を抑える薬を注射することがあります。
- 手術療法: 保存療法で十分な効果が得られない場合や、重度の損傷で早期の機能回復が必要な場合には、手術を検討します。当院の連携医療機関と連携し、最適な医療を提供します。
予防・自宅でのケア
怪我をしにくい身体づくりと環境づくりが重要です。
- 準備運動・クールダウン: 運動前には十分なウォーミングアップで体を温め、運動後にはクールダウンで疲労を残さないようにしましょう。
- ストレッチ・筋力トレーニング: 筋力や柔軟性を高めることで、怪我のリスクを減らします。特に、スポーツでよく使う部位のケアを重点的に行いましょう。
- 適切なフォームの習得: 不適切なフォームは身体に負担をかける原因になります。専門家のアドバイスを受け、正しいフォームを身につけましょう。
- 休養と栄養: 十分な休養とバランスの取れた食事は、疲労回復と身体の修復に不可欠です。
- 適切な用具の使用: ご自身に合った靴やスポーツ用具を選び、ヘルメットやサポーターなどの防具を適切に使用しましょう。
受診を強く推奨する症状や状況
以下のような症状が見られる場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
- 安静にしていても痛みが強い、または悪化する
- 関節の腫れや変形が著しい
- 患部を動かせない、または動かすと激しい痛みがある
- しびれや麻痺がある
- 発熱を伴う痛み
- スポーツ中に「ブチッ」という音がした、あるいは何かが切れるような感覚があった
よくある質問
Q1. スポーツ傷害は、自己判断で市販薬を使ったり、様子を見たりしても大丈夫ですか?
A1. 軽度の打撲や捻挫であれば、市販薬や応急処置で様子を見ることもできますが、痛みが続く場合や、腫れがひどい場合、動かせないなどの症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診することをおすすめします。特に、骨折や靭帯損傷は早期の診断と適切な治療が重要です。
Q2. 子供のスポーツ中の怪我で注意することはありますか?
A2. 成長期のお子様は、骨端線(成長軟骨)があるため、大人とは異なる特徴的なスポーツ傷害が発生することがあります。オスグッド・シュラッター病はその代表例です。無理な練習は成長の妨げになる可能性もあるため、お子様の症状に気づいたら早めに専門医にご相談ください。
Q3. スポーツに復帰する目安はありますか?
A3. 症状や怪我の程度によって異なりますが、痛みがなくなり、関節の可動域や筋力が回復し、スポーツに必要な動作が問題なく行えるようになることが目安です。医師や理学療法士の指導のもと、焦らず段階的に復帰計画を進めることが、再発予防のために非常に重要です。
Q4. スポーツ傷害の予防のために、日常生活でできることはありますか?
A4. 十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけ、運動前後のウォーミングアップとクールダウンを徹底しましょう。また、日頃から適度な運動で筋力や柔軟性を維持することも大切です。ご自身の身体の状態に合ったトレーニングや、必要に応じて専門家によるフォーム指導を受けることも有効です。