骨折・打撲・神経損傷
骨折・打撲・神経損傷について
交通事故の衝撃は、身体の様々な部位に影響を及ぼし、骨折、打撲、神経損傷といった様々な症状を引き起こす可能性があります。
- 骨折: 交通事故による強い衝撃が骨に加わることで、骨が折れたり、ひびが入ったりする状態です。大きな事故でなくとも、思わぬ場所に骨折が生じることがあります。
- 打撲: 衝突や転倒などによる強い衝撃で、筋肉や血管が損傷する状態です。いわゆる「打ち身」や「あざ」として現れることが多く、内出血を伴うこともあります。
- 神経損傷: 交通事故の衝撃により、神経が圧迫されたり、引き伸ばされたり、直接的に損傷を受けたりする状態です。首が鞭のようにしなる「むち打ち(頸椎捻挫)」では、頸椎(首の骨)周辺の神経が傷つき、手足のしびれや痛み、めまい、吐き気など多様な症状を引き起こすことがあります。また、脊椎の損傷により、脳から脊髄を満たす髄液が漏れる「低髄液圧症候群」を発症し、頭痛や吐き気、めまいなどが現れるケースもあります。
これらの症状は、事故直後にはショックで痛みを感じにくかったり、数日〜数ヶ月経ってから現れたりすることもあるため、注意が必要です。
骨折・打撲・神経損傷の症状について
骨折、打撲、神経損傷はそれぞれ異なる具体的な症状を呈します。
骨折
- 激しい痛み: 損傷した直後から強い痛みを感じ、動かすことが困難になります。
- 変形・腫れ: 患部が変形しているように見えたり、広範囲にわたって腫れや内出血が見られたりします。
- 異常な可動性: 通常では曲がらない方向に曲がるなど、異常な動きが見られることがあります。
- 軋轢音(あつれきおん): 骨が擦れるような音が聞こえることがあります。
- 歩行困難: 足の骨折の場合、歩くことが困難になります。
打撲
- 痛み: ぶつけた箇所に痛みが生じます。押すと痛むのが特徴です。
- 腫れ・熱感: 患部が腫れたり、熱を持ったりすることがあります。
- 皮下出血(あざ): 皮膚や皮下組織の血管が傷つき、内出血によって青紫色に変色することがあります。
- 可動域制限: 筋肉の損傷により、関節の動きが制限されることがあります。
- 部位別の症状:
- 頭部: 頭痛、吐き気、めまい、ふらつき、意識障害、脳震盪など。場合によっては頭蓋内出血の可能性もあります。
- 首や背中: 痛み、手足のしびれ、息苦しさ、吐き気など。重要な神経が走っているため、呼吸障害や手足の麻痺につながることもあります。
- 胸: 痛み、息苦しさ、吐き気など。肋骨や胸骨の骨折を伴うと呼吸困難や血痰、脈拍の乱れが生じることもあります。
- 腰: 激しい痛み。急激な動作で関節包、椎間板、靭帯、筋肉などが引き伸ばされたり断裂したりすることで生じます。
神経損傷
- 首・肩・背中の痛みやこり: 首が鞭のようにしなることで、頸椎周辺の筋肉や靭帯が損傷し、痛みや強いこりを感じます。
- 手足のしびれ・だるさ・筋力低下: 脊髄から出る神経が損傷したり圧迫されたりすることで、支配領域の手足に症状が現れます。左右どちらか片側に出ることが多いです。
- 頭痛・頭重感: 首の神経へのダメージや髄液の漏れなどが原因で生じます。低髄液圧症候群の場合は、頭を上にする姿勢で頭痛が悪化するのが特徴です。
- めまい・耳鳴り・吐き気: 自律神経症状として現れることが多く、頸椎の中を通る自律神経へのダメージが関係していることがあります。
- 眼の症状: 眼のかすみ、眼精疲労、視力低下などが起こる場合があります。
- 全身の倦怠感・疲労感: 事故による精神的な負荷や、体の不調が続くことで、全身的な倦怠感が現れることがあります。
骨折・打撲・神経損傷の診断と検査について
交通事故後の症状は、レントゲン検査だけでは判断が難しいケースもあります。当院では、症状の原因を正確に把握するために、以下のような検査を組み合わせて行います。
- 問診・視診: 事故の状況、痛みや不調の具体的な症状、いつから始まったかなどを詳しくお伺いします。身体の状態を目で確認し、触診(実際に体に触れて確認する診察)も行います。
- レントゲン検査(X線検査): 骨折や脱臼の有無、骨の変形、関節の状態などを確認する基本的な画像検査です。
- MRI検査: 強い磁石と電波を使って体内の詳細な断面画像を撮影します。レントゲンでは分かりにくい骨折の詳細な状態、椎間板ヘルニア、靭帯損傷、腱板断裂、神経の圧迫、脳梗塞、脳腫瘍などの診断に非常に有効です。当院ではMRI検査が可能であり、緊急性の高い場合は当日中に検査を行うことも可能です。
- CT検査: X線を使って体の断面画像を撮影します。特に骨折の詳細な評価や、脳出血の有無を確認するのに優れています。
- エコー検査(超音波検査): 超音波を用いて、筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織の状態をリアルタイムで観察します。肉離れ、腱鞘炎、靭帯損傷、微細な骨折などを評価できます。
- 神経伝導速度検査(NCS)・筋電図(EMG): 手足のしびれや筋力低下の原因を調べる検査です。末梢神経の伝わる速さや筋肉の電気活動を測定し、神経や筋肉の障害を特定します。
これらの検査を組み合わせることで、症状の正確な診断と、最適な治療計画の立案に繋げます。
骨折・打撲・神経損傷の治療法について
骨折、打撲、神経損傷の治療は、症状の種類や重症度によって異なります。
骨折・打撲の一般的な治療法
- RICE処置: 急性のケガに対する基本的な応急処置です。「Rest(安静)」「Ice(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上)」の頭文字をとったもので、患部を安静に保ち、冷やし、圧迫し、心臓より高い位置に挙げることで、腫れや内出血の進行を抑え、痛みを和らげます。
- 固定: 骨折や重度の靭帯損傷の場合、ギプスやシーネ(副木)、コルセットなどを用いて患部を固定し、安静を保ち、組織の治癒を促します。
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるために、鎮痛消炎剤や湿布などが処方されます。必要に応じて、痛み止めの注射を行うこともあります。
- リハビリテーション: 痛みが軽減し、急性期が過ぎたら、固まった筋肉や低下した機能の回復を目指し、理学療法士による運動療法や物理療法(首の牽引、干渉波、温熱療法など)を行います。早期のリハビリは、後遺症を残さないために重要です。無理のない範囲で段階的に可動域の回復や筋力強化を図ります。
神経損傷(むち打ち症)の治療法
- 安静: 初期には頸椎カラーなどで首の負担を軽減し、安静を保つことが大切です。
- 薬物療法: 炎症を抑える薬、痛み止め、筋弛緩剤、ビタミンB12などが処方されます。症状に応じて、ステロイド内服薬や、不安や不眠がある場合には抗うつ剤が処方されることもあります。
- 物理療法: 温熱療法、電気治療、超音波治療器などを用いて、血行促進や痛みの緩和、組織の修復を促します。
- 運動療法: 理学療法士の指導のもと、硬くなった筋肉のストレッチや、低下した機能の回復を目指す運動を行います。
- 生活指導: 日常生活において、上を向く動作を避ける、パソコン作業時の姿勢に注意するなど、症状を悪化させないための具体的なアドバイスを行います。
予防・自宅でのケア
- 事故直後の対応: 事故に遭ったら、まずは警察に連絡し、相手の連絡先や保険加入先を確認しましょう。そして、たとえ自覚症状が軽くても、すぐに医療機関を受診することが大切です。
- 自己判断を避ける: 症状が軽いからと自己判断で放置せず、必ず医師の診察を受けてください。特に、頭部や腹部の打撲、激しい痛みが続く場合、意識障害が見られる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 安静と冷却: 打撲や捻挫の場合、RICE処置を参考に、患部を安静にし、氷水などで冷やして痛みや腫れを抑えましょう。
- 無理のない範囲での活動: 痛みが治まっても、無理をして体を動かしすぎると、症状の悪化や再発につながることがあります。医師の指示に従い、徐々に活動レベルを上げていきましょう。
よくある質問
Q1: 交通事故後、すぐに症状がなくても病院を受診した方が良いですか?
A1: はい、受診をお勧めします。交通事故の衝撃による症状は、事故直後ではなく、数日後や数ヶ月経ってから現れることがよくあります。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが、後遺症を残さないために非常に重要です。不安な症状があれば、検査を受けるくらいの気持ちで、まずはご相談ください。
Q2: 打撲と骨折は自分で見分けられますか?
A2: 完全に自己判断で区別することは難しいですが、いくつかの目安はあります。骨折の場合は、受傷した瞬間に「何かが折れたような感触や音」を感じることが多く、外から見て変形している場合や、関節以外の部分で通常とは違う方向に曲がっている場合は骨折の可能性が高いです。また、骨折は直後から「激痛で動かせない」ほどの強い痛みを感じ、軽く触るだけでも痛むのに対し、打撲は押すと痛む程度であることが多いです。腫れや内出血が広範囲に及ぶ場合も骨折が疑われますので、気になる場合は無理せず整形外科を受診しましょう。
Q3: むち打ち症の症状にはどのようなものがありますか?
A3: むち打ち症(外傷性頸部症候群)は、首の痛みだけでなく、頭痛、めまい、吐き気、手足のしびれ、だるさ、眼精疲労、耳鳴り、倦怠感など、様々な症状を引き起こすことがあります。これは、首の神経や自律神経が影響を受けるためと考えられます。事故から数日経って症状が現れることも多いため、注意が必要です。
Q4: 交通事故の治療費はどのようになりますか?
A4: 交通事故の治療費は、基本的に交通事故の相手が加入している自動車保険の自賠責保険や任意保険から支払われることがほとんどです。当院と保険会社が直接やり取りを行うため、患者様にご負担をおかけすることはございません。保険会社に当院に通院する旨をお伝えいただければ、その後の手続きはスムーズに進みます。
Q5: 小児や高齢者の場合、交通事故の症状で特に注意すべき点はありますか?
A5: 小児の場合、高いところから転落するなどして頭や背中を強打した際は、すぐに異常が見られなくても、後から異変が生じるケースがあります。自力で起き上がれない、意識がおかしいなどの症状があれば、すぐに救急車を呼びましょう。高齢者の場合は、骨がもろくなっていることが多く、比較的軽微な衝撃でも骨折しやすい傾向があります。また、痛みの感じ方が若年者と異なる場合や、複数の持病を抱えていることも多いため、些細な変化にも注意し、早めに医療機関を受診することが重要です。