外傷・術後リハビリテーション
外傷・術後リハビリテーションとは
外傷や手術は、私たちの体に大きな負担をかけ、日常生活に様々な影響を及ぼすことがあります。骨折、脱臼、捻挫、肉離れなどの外傷や、消化器、循環器、脳神経外科領域などの手術の後には、身体機能が一時的に低下し、痛みや動きにくさを感じることが少なくありません。
リハビリテーションは、これらの身体機能の回復を促進し、日常生活や社会生活への早期復帰を目指すための重要なプロセスです。単に元の状態に戻すだけでなく、痛みの管理、合併症の予防、再発予防、そして精神的なサポートを通じて、患者様お一人おひとりの生活の質(QOL)向上を目標としています。
外傷・術後の症状について
外傷や手術後に現れる症状は多岐にわたります。以下に主な症状と、それらが身体に与える影響についてご説明します。
- 痛みの継続・悪化: 手術部位や損傷部位の痛みが続く、または悪化することがあります。適切なリハビリは痛みの軽減に繋がります。
- 関節の可動域制限: 長期間安静にすることで、関節が硬くなり、曲げ伸ばしがしにくくなることがあります(拘縮)。
- 筋力の低下: 身体を動かさない期間が長くなると、筋肉が痩せ、筋力が低下します。これにより、立ち上がる、歩くなどの基本的な動作が困難になることがあります。
- 身体機能のバランス不良・協調性低下: 手術や外傷によって、左右のバランスが崩れたり、複数の筋肉を連携させて動かす協調性が失われたりすることがあります。
- しびれ・感覚の変化: 神経が圧迫されたり損傷したりすることで、手足にしびれが生じたり、感覚が鈍くなったりすることがあります。
- むくみ(浮腫): 手術部位や損傷部位に炎症や血流の変化により、むくみが生じることがあります。
- 精神的な不安・意欲の低下: 痛みや機能制限によって、外出を控えるようになったり、社会復帰への不安を感じたりすることがあります。
外傷・術後リハビリテーションの必要性
外傷・術後リハビリテーションが必要となる主な原因は、以下のように分類されます。
- 骨折: 骨が物理的な衝撃によって損傷した状態です。
- 大腿骨近位部骨折: 特に高齢者に多く、転倒により要介護状態に陥りやすい骨折です。
- 脱臼: 関節が本来の位置からずれてしまう状態です。
- 捻挫: 関節の靭帯や関節包が損傷する状態です。
- 打撲: 身体を強くぶつけることで、皮下組織や筋肉が損傷する状態です。
- 肉離れ: 筋肉が急激に収縮することで、筋肉の繊維が損傷する状態です。
- むち打ち症(頸椎捻挫): 交通事故などで首が急激に前後に揺さぶられることで、首の組織が損傷する状態です。
- 切り傷・すり傷・やけど・咬傷などの創傷: 皮膚やその下の組織が損傷した状態です。
- スポーツ外傷・障害: スポーツ活動中に生じる身体の損傷。
- 突き指: 指に強い力が加わることで起こる外傷で、骨折や脱臼、腱・靭帯損傷を含む場合があります。
- テニス肘・野球肘: 肘の使いすぎによる炎症です。特に発育期の子どもに特有の障害が起こりやすい部位です。
- 野球肩(投球障害肩): 投球動作の繰り返しにより肩関節を構成する骨や軟骨、筋肉、腱が損傷する障害です。
- 腰椎椎間板ヘルニア・腰椎分離症・腰痛症: ジャンプや捻りなど腰に負担のかかる動作の繰り返しにより生じる腰の障害です。
- 前十字靭帯損傷・半月板損傷: 膝への大きな力や衝撃、ひねりによって生じる膝の損傷です。
- ジャンパー膝・オスグッド病: 膝の使いすぎによる障害です。
- 手術後の機能低下: 手術によって身体の機能が一時的に制限されることや、手術部位の安静期間による筋力低下、関節の拘縮などが挙げられます。
- 変形性関節症: 関節の軟骨がすり減り、炎症や痛みが生じる疾患で、リハビリでは痛みを避けた筋力強化訓練などを行います。
- 腰部脊柱管狭窄症: 腰椎の神経組織と血管のスペースが減少し、腰痛や下肢痛、臀部痛を引き起こします。
- 肩腱板断裂: 肩の腱板が損傷した状態で、痛みを避けた運動や筋力強化が必要です。
外傷・術後の診断と検査について
当院では、患者様お一人おひとりの症状や状態を正確に把握し、最適な治療方針を決定するために、様々な検査を組み合わせて診断を行います。
- 問診・身体診察: 症状の詳細、発症の経緯、既往歴などを詳しくお伺いし、痛みの部位や可動域、筋力などを確認します。
- レントゲン検査(X線検査): 骨折の有無、脱臼、骨の変形、関節の状態などを確認する整形外科で最も基本的な画像検査です。胸部レントゲンで内科的な問題がないかも確認することがあります。
- MRI検査: レントゲンでは分かりにくい椎間板ヘルニア、靭帯・半月板損傷、腱板断裂、軟骨の状態、神経の圧迫などを詳細に評価できます。放射線を使わないため、放射線被ばくの心配がありません。
- CT検査: 特に骨折の詳細な評価(微細な骨折、骨折の形状、骨癒合の状態など)に有用です。脊椎や関節の状態を立体的に把握することも可能です。
- エコー検査(超音波検査): 超音波で筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織の状態をリアルタイムで観察します。肉離れ、腱鞘炎、腱板断裂、靭帯損傷、神経の状態、関節の炎症、微細な骨折などを評価できます。
- 神経伝導速度検査(NCS)、筋電図(EMG): 手足のしびれや筋力低下の原因を調べる検査です。末梢神経に電気刺激を与え、神経を信号が伝わる速度や筋肉の反応を測定します。手根管症候群や糖尿病性神経障害などが疑われる場合に行います。
治療法について
外傷・術後のリハビリテーションは、患者様お一人おひとりの状態や目標に合わせて、多角的なアプローチで行われます。
一般的な治療法
- 保存的治療: 手術をせずに症状の改善を目指す治療法です。安静、装具の使用、薬物療法、リハビリテーションなどが含まれます。
- 手術療法: 保存的治療で改善が見込めない場合や、重度の損傷がある場合などに検討されます。手術後は、早期からのリハビリテーションが非常に重要になります。
リハビリテーション
機能回復の促進、痛みの管理、合併症の予防、再発予防、精神的なサポートを目的として行われます。
- 運動療法: 筋力、柔軟性、バランス、協調性を改善し、日常生活や職場での活動に必要な動作を再び行えるようにするための訓練です。患者さんの状態に合わせて、無理のない範囲で段階的に負荷を上げていきます。
- 物理療法: 温熱療法、寒冷療法、電気療法、マッサージなどを通じて、痛みを和らげ、血流を改善し、治癒を促進します。
- 装具療法: 必要に応じて、ギプスやサポーター、テーピングなどを用いて、患部を保護・固定し、回復を促します。
- 生活指導・セルフマネジメント: 患者様ご自身で症状を管理し、再発を予防するための正しい運動や姿勢の指導、日常生活での注意点などをアドバイスします。
湿潤療法について
当院の創傷(体表のけが)処置では、湿潤療法も行っています。湿潤療法とは、傷口を水で洗い流し、創面を専用の創傷被覆材(ドレッシング材)で密封する方法です。消毒によって傷を深くすることがなく、痛みが少なく、早くきれいに治るという特徴があります。
受診を強く推奨する症状や状況
以下のような症状や状況が見られる場合は、軽視せずに早めに医療機関を受診してください。
- 激しい痛みがあり、日常生活に支障をきたしている場合
- 関節が腫れて熱を持っている場合
- 手足のしびれが強くなったり、感覚が鈍くなったりする場合
- 力が入りにくくなり、麻痺が疑われる場合
- 発熱を伴う場合
- 外傷後、関節の変形がみられる、または動かせない場合
- 交通事故や大きな転倒など、強い衝撃を受けた場合
よくある質問
Q1: リハビリはいつから始められますか?
A1: 症状や手術の種類にもよりますが、一般的には早期に始めるほど回復が早まると言われています。医師の判断のもと、安全に配慮しながら、痛みのない範囲で少しずつ開始していきます。
Q2: リハビリはどのくらいの期間続ける必要がありますか?
A2: リハビリの期間は、外傷の種類や重症度、手術の内容、患者様の回復状況によって異なります。医療保険が適用されるリハビリ期間には制限がありますが、期間を過ぎても継続をご希望の場合は、自費リハビリも選択肢としてご案内できます。
Q3: 自宅でできるリハビリはありますか?
A3: はい、ございます。医師や理学療法士の指導のもと、ご自宅でできる簡単なストレッチや筋力トレーニング、日常生活での注意点などをご説明します。自宅でのケアを継続することが、回復を早める上で非常に重要です。
Q4: スポーツをしているのですが、スポーツ復帰は可能ですか?
A4: はい、可能です。当院ではスポーツ外傷・障害のリハビリにも力を入れており、競技復帰に向けて、段階的なトレーニングや動作指導を行います。ただし、焦らず、完全に回復してから復帰することが再発予防のために重要です。