disease

認知症

認知症について

認知症とは、一度正常に発達した脳の機能が、病気や障害によって低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指します。記憶力や判断力だけでなく、言葉の理解、行動、感情にも影響が出ることがあります。認知症は単なる「物忘れ」とは異なり、進行性の病気であり、早期に適切な診断とケアを受けることが重要です。

認知症の主な種類

認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や症状の現れ方が異なります。

アルツハイマー型認知症

認知症の中で最も多く、脳の中に「アミロイドβ」という異常なタンパク質が蓄積し、神経細胞が壊れていくことで発症すると考えられています。記憶障害が初期から目立つのが特徴で、新しい出来事を覚えられない、同じ話を繰り返すといった症状が見られます。女性に多い傾向があります。

脳血管性認知症

脳梗塞や脳出血など、脳の血管に障害が起きることで脳の血流が悪くなり、神経細胞がダメージを受けることで発症します。男性に多く、脳の障害された部位によって症状の出方が異なり、「まだら認知症」と呼ばれるように、できることとできないことが混在する特徴があります。手足の麻痺や言語障害、排尿障害などを伴うこともあります。

レビー小体型認知症

脳の神経細胞に「レビー小体」という特殊なタンパク質が集まることで発症します。アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症に次いで多いとされています。特徴的な症状として、リアルな幻視(実際にはないものが見える)、手足の震えや筋肉のこわばりといったパーキンソン症状、眠っているときに大声を出したり暴れたりするレム睡眠行動障害などがあります。

前頭側頭型認知症

脳の前頭葉や側頭葉の前方が萎縮することで発症します。比較的若い年代(40~60代)で発症することが多く、症状としては、社会的なルールが守れない、同じ行動を繰り返す、言葉が出にくくなるといった行動障害や人格の変化が目立つのが特徴です。

認知症の症状について

認知症の症状は多岐にわたりますが、大きく分けて「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」に分類されます。

中核症状

脳の機能が直接的に障害されることで現れる症状です。

  • 記憶障害
    • 新しいことを覚えられない(例:数分前の出来事を忘れる、同じことを何度も尋ねる)。
    • 以前の記憶も少しずつ思い出せなくなる(例:日付や場所がわからなくなる、家族の名前がわからなくなる)。
  • 見当識障害
    • 時間、場所、人物の認識が困難になる(例:今が何月何日かわからない、自宅なのに道に迷う、家族の顔が認識できない)。
  • 実行機能障害
    • 計画を立てて物事を順序立てて行うことが難しくなる(例:料理の手順が分からなくなる、買い物リストを作れない)。
  • 失語(言葉の障害)
    • 言葉を理解するのが難しい、適切な言葉が出てこない、話したいことが話せない。
  • 失行(動作の障害)
    • 身体に麻痺がないのに、日常的な動作(例:服を着る、お湯を沸かす)ができない。
  • 失認(認識の障害)
    • 感覚器に異常がないのに、物や状況を正しく認識できない(例:スプーンが何かわからない、娘の家なのに道に迷う)。

行動・心理症状(BPSD)

中核症状に加えて、患者様の性格や環境、人間関係などが複雑に絡み合って現れる精神症状や行動の異常です。患者様ご本人の苦痛だけでなく、介護するご家族の負担になることも少なくありません。

  • 精神症状
    • うつ状態、不安感、意欲の低下
    • 妄想(例:物盗られ妄想 – 財布を盗られたと思い込む)
    • 幻覚(特にレビー小体型認知症でリアルな幻視が見られることがある)
    • 感情失禁(些細なことで泣いたり怒ったりするなど、感情のコントロールが難しい)
  • 行動異常
    • 徘徊(目的もなく歩き回る、家から出て行って迷子になる)
    • 不潔行為、収集癖
    • 暴言、暴力
    • 昼夜逆転

受診を強く推奨する症状や状況

以下のような症状が見られた場合は、単なる加齢による物忘れではなく、認知症の可能性も考えられます。早期の診断と治療が重要ですので、お早めに医療機関にご相談ください。

  • 同じ話を何度も繰り返すようになった。
  • 物のしまい場所を忘れてしまい、盗られたと思い込むようになった。
  • 以前はできていた家事や仕事の段取りがうまくいかなくなった。
  • 慣れた場所で道に迷うようになった。
  • 感情の起伏が激しくなり、些細なことで怒ったり泣いたりするようになった。
  • 身なりに無頓着になったり、清潔感が保てなくなった。
  • 性格が変わったように感じる(無気力になったり、逆に興奮しやすくなったり)。

認知症の診断と検査について

当院では、患者様やご家族から詳しくお話を伺う問診に加え、様々な検査を組み合わせて認知症の診断を行います。

診察・問診

まずは患者様ご本人やご家族から、いつ頃からどのような症状が現れたか、日常生活で困っていることは何か、他に持病があるかなど、詳しくお話を伺います。症状の現れ方や経過は診断の手がかりとなります。

認知機能検査

記憶力、注意力、言語能力、判断力など、脳のさまざまな働きを評価するための検査です。

  • MMSE(ミニメンタルステート検査)やMoCA(モントリオール認知評価)などが代表的です。簡単な質問に答えたり、図形を模写したりする形式で、認知機能の低下の有無や程度を客観的に評価します。検査時間は通常15分〜30分程度です。

画像検査

脳の状態を画像で確認し、認知症の原因となっている病気や、他の病気の可能性がないかを調べます。

  • CT検査: 脳出血や脳腫瘍の有無、水頭症の有無などを確認するのに有用です。短時間で広範囲の撮影が可能です。

血液検査

甲状腺機能の異常やビタミン欠乏など、認知症と似た症状を引き起こす他の病気がないかを確認するために行います。これにより、治療可能な病気を鑑別し、適切な治療に繋げます。

認知症の治療法について

現在の医療では、失われた神経細胞を元に戻したり、認知症を完全に治したりすることは難しいとされています。しかし、薬物療法と非薬物療法を組み合わせることで、症状の進行を遅らせたり、行動・心理症状を軽減し、患者様やご家族の生活の質を向上させることが可能です。

薬物療法

認知症の種類や症状に応じて、以下のような薬が用いられます。

  • アルツハイマー型認知症の薬
    • 脳内の神経伝達物質を調整し、認知機能の低下を緩やかにする目的で、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が使用されます。
  • 脳血管性認知症の薬
    • 脳血管性認知症そのものに直接作用する薬は限定的ですが、原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の治療を徹底し、脳卒中の再発を予防することが最も重要です。これにより、認知症の進行を防ぐことができます。
    • 脳循環代謝改善薬が、意欲低下や認知機能の改善に用いられることもあります。
    • 精神的な症状(焦燥、興奮、攻撃性など)に対しては、症状を和らげる薬が処方されることがあります。
  • レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の薬
    • レビー小体型認知症では、アルツハイマー病と同様の薬が用いられることがあります。パーキンソン症状があれば、抗パーキンソン薬も使用されます。
    • 前頭側頭型認知症には確立された治療法はありませんが、異常行動などの症状が出ている場合に対症的に薬が使われることがあります。

非薬物療法(生活習慣の改善・リハビリテーション)

薬に頼るだけでなく、患者様に残された能力を活かし、生活の質を高めるためのケアも非常に重要です。

  • 生活習慣の改善
    • 高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理: 脳血管性認知症の最大の予防策であり、進行を遅らせるためにもこれらの生活習慣病の適切な管理が不可欠です。食事や運動の改善、必要に応じた薬物療法を継続します。
    • 禁煙・節酒: 喫煙は脳血管性認知症の危険因子であると考えられています。
    • バランスの取れた食事: ビタミンE、C、魚に含まれる脂肪酸などが脳血管性認知症予防に有効とされています。
    • 適度な運動: 散歩など、無理のない範囲で体を動かすことは、脳血管性認知症の発症が減少することが示されており、適度な身体活動が推奨されます。
    • 体重管理: 痩せすぎも肥満も認知症になりやすいとされています。中年期からの継続的な体重管理が望ましいものです。
  • 認知リハビリテーション
    • 残っている認知機能を維持・向上させることを目的とします。計算ドリルや書き取り、音読など、患者様が楽しみながら取り組める活動を推奨します。
  • リアリティ・オリエンテーション
    • 日付や時間、場所、人などの基本的な情報を繰り返し確認し、現実への認識を促すことで、見当識障害の改善を目指します。
  • 環境調整とコミュニケーション
    • 安全で安心できる環境を整えることや、患者様の尊厳を尊重し、穏やかに接することが、行動・心理症状の軽減に繋がります。

よくある質問

Q1. 物忘れが多いのですが、認知症なのでしょうか?

A1. 物忘れは加齢によっても起こりますが、認知症による物忘れとは異なります。加齢による物忘れは体験の一部を忘れる(例:「朝食に何を食べたか思い出せないが、食べたことは覚えている」)のに対し、認知症の物忘れは体験そのものを忘れてしまいます(例:「朝食を食べたこと自体を覚えていない」)。また、日常生活に支障が出ている場合は認知症の可能性も考えられます。ご心配な場合は、一度当院の物忘れ外来にご相談ください。

Q2. 認知症は予防できますか?

A2. 完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。特に脳血管性認知症に関しては、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を管理し、脳卒中を予防することが最も重要です。禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事も認知症予防に繋がると言われています。当院では脳ドックを通じて脳の状態を早期にチェックすることも可能です。

Q3. 認知症の検査は痛いですか?

A3. 認知症の診断で行う検査は、ほとんど痛みを伴いません。認知機能検査は質問に答えたり、簡単な作業を行う形式です。MRI検査は大きな音がしますが、痛みはなく、CT検査も同様です。採血はチクッとした痛みがありますが、通常は一瞬で終わります。

Q4. 家族が認知症かもしれないのですが、どのように接すればよいですか?

A4. 認知症の方への接し方は非常に重要です。まずは、ご本人の尊厳を尊重し、安心できる環境を整えることが大切です。間違いを指摘せず、否定しない、ゆっくりと分かりやすい言葉で話す、穏やかな態度で接するなどを心がけましょう。ご家族だけで抱え込まず、専門機関や介護サービスなども活用し、サポートを得ることも大切です。当院でもご相談に応じて適切なアドバイスや情報提供を行います。

Q5. 脳ドックで認知症の兆候はわかりますか?

A5. 脳ドックでは、MRI/MRA検査などを用いて、脳の萎縮の程度や、無症候性脳梗塞、白質病変といった脳血管性認知症のリスク因子、脳腫瘍など、認知症に繋がる可能性のある脳の異常を早期に発見できることがあります。早期発見により、適切な予防策や治療を開始できる可能性があります。当院ではCT・MRIによる高度な検査体制が整っており、脳ドックも実施しています。

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