disease

血管性認知症

血管性認知症について

血管性認知症は、脳の血管に障害が起きることで発症する認知症です。脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)などが原因となり、脳の神経細胞への血流が不足したり、血液によって脳が圧迫されたりすることで、認知機能が低下します。アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症とされており、男性に多く見られる傾向があります。

血管性認知症の症状について

血管性認知症の症状は、脳のどの部分がどれくらい障害を受けたかによって大きく異なります。症状が出たり出なかったり、時間帯によって変動することもあり、「まだら認知症」と呼ばれる特徴があります。

主な症状

  • 認知機能障害(中核症状)
    • 記憶障害: 物忘れが激しくなる、同じことを何度も聞いたり話したりするなどの症状が現れます。
    • 見当識障害: 時間や場所、人が分からなくなることがあります。
    • 注意障害: 注意力や集中力が低下し、二つのことを同時に行うのが難しくなることがあります。
    • 実行機能障害: 物事を計画立てて効率的に実行することが難しくなります。
    • 言語障害: 言葉を正しく理解したり、表現したりすることが困難になることがあります。 これらの症状は、急に現れたり、落ち着いていると思ったら急に悪化したりするなど、バラつきが見られることがあります。
  • 行動・心理症状(BPSD)
    血管性認知症の患者様は、ご自身で病気を自覚し、変化に気づいているために、以下のような症状が出やすい傾向があります。
    • 抑うつ・不安感: 憂鬱でふさぎ込んだり、一人でいることに不安を感じたりすることがあります。
    • 意欲の低下: 周りのことに興味を示さなくなり、何をするのも億劫に感じることがあります。
    • 感情のコントロールの難しさ(感情失禁): 些細なことで泣いたり怒ったりするなど、感情のコントロールが困難になることがあります。喜怒哀楽の感情が通常よりも強く現れたり、逆に現れにくくなったりすることもあります。
    • 徘徊、暴力: 目的なく歩き回ったり、攻撃的になったりするケースも見られます。
  • 身体症状(神経症状)
    脳の血管障害が起きた位置や領域によって、認知症の比較的早期から身体的な症状を伴うことがあります。
    • 運動麻痺: 手足のしびれ、力が入りにくいなどの症状が出ることがあります。
    • 歩行障害: 歩きにくくなったり、転びやすくなったりすることがあります。
    • 感覚障害: 感覚がない、痛みや温度を感じにくいなどの症状が出ることがあります。
    • 構音障害: 声が出ない、喋りにくい、呂律が回らないなどの言語障害が見られることがあります。
    • 嚥下障害: 物がうまく飲み込めない、むせるなどの症状が現れることがあります。
    • 排尿障害: 頻尿や尿失禁などの症状を伴うことがあります。

これらの症状は、脳卒中を繰り返すたびに「階段状」に悪化していく特徴がありますが、細い血管が少しずつ詰まるタイプの血管性認知症では、ゆるやかな進行をたどる場合もあります。

血管性認知症の原因

血管性認知症の主な原因は、脳卒中です。脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れて出血する脳出血などによって、脳の神経細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなり、神経細胞が破壊されることで認知機能が低下します。

これらの脳卒中は、血管の老化とも言われる「動脈硬化」が原因で起こることがほとんどです。動脈硬化は、加齢に加えて、以下のような生活習慣病が危険因子となります。

  • 高血圧: 脳出血の主な危険因子でもあり、脳血管性認知症との強い関連が報告されています。
  • 糖尿病: 動脈硬化を促進し、脳梗塞のリスクを高めます。
  • 脂質異常症(高コレステロール血症): 動脈硬化を促進し、脳梗塞のリスクを高めます。
  • 心房細動などの不整脈: 心臓でできた血栓が脳血管を詰まらせる「心原性脳塞栓症」の原因となり、認知症のリスクを高めます。
  • 肥満: 動脈硬化の進行に関与します。
  • 喫煙: 脳血管性認知症の危険因子と考えられています。
  • 運動不足: 生活習慣病のリスクを高めます。

脳卒中のエピソードが明確にある場合と、自覚症状がないまま小さな脳血流障害が蓄積していく場合があります。

血管性認知症の診断と検査について

血管性認知症の診断には、患者様の症状やご家族からの情報、そして画像検査や神経心理学的検査が重要です。

当院では、患者様の症状を詳しくお伺いし、以下のような検査を組み合わせて診断を行います。

  • 神経心理学的検査: 記憶力、注意力、言語能力、判断力といった認知機能の状態を評価します。質問に答えたり、簡単な作業を行ったりする形式で進められます。改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)などが代表的です。
  • 頭部CT検査: 脳の断面をX線で撮影します。脳出血の有無や、脳梗塞の発見、頭のケガの確認などに有効です。
  • SPECT検査: 脳の血流を調べる検査です。脳卒中が起きている領域の血流低下を認められます。

当院ではCT検査が実施可能です。MRIやSPECT検査が必要な場合は、地域の連携医療機関をご紹介し、スムーズに検査を受けていただけるよう手配いたします。

血管性認知症の治療法について

現在の医療では、脳卒中によって壊死した脳の神経細胞を直接回復させることは困難です。そのため、血管性認知症の治療は、症状の進行を遅らせること、そして脳卒中の再発を予防することに重点が置かれます。

薬物療法

脳卒中の危険因子である生活習慣病の治療が不可欠です。

  • 血液の状態を改善する薬:
    • 血圧降下剤: 高血圧の管理は、脳出血や脳梗塞の再発予防、ひいては血管性認知症の進行予防に非常に重要です。
    • コレステロール低下剤: 脂質異常症の治療薬で、動脈硬化の進行を抑えます。
    • 抗血栓薬(抗凝固薬、抗血小板薬): 血液をサラサラにして、脳梗塞の再発を予防します。特に心房細動がある場合には、脳梗塞のリスクを減らすために抗凝固療法が重要です。
  • 行動・心理症状(BPSD)を改善する薬: 興奮、苛立ち、意欲の低下、抑うつなどが強く、日常生活に支障をきたす場合には、抗精神病薬や抗うつ剤の使用を検討することがあります。
  • 抗認知症薬: アルツハイマー型認知症を合併している場合、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジルなど)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)などの抗認知症薬が検討されることがあります。

非薬物療法(生活習慣の見直しとリハビリテーション)

生活習慣病の予防と管理は、血管性認知症の進行を防ぐ上で非常に重要です。

  • 栄養バランスの取れた食事、節酒: 塩分、脂質、糖分の過剰摂取を避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
  • 適度な運動: ウォーキングやジョギングなど、患者様の体力に合わせた有酸素運動を定期的に行うことが推奨されます。適度な身体活動は脳血管性認知症の発症減少にも繋がるとされています。
  • 禁煙: 喫煙は脳血管性認知症の危険因子です。禁煙は脳血管性認知症の予防に非常に有効です。
  • 体重管理: 痩せすぎも肥満も認知症になりやすいとされており、中年期からの継続的な体重管理が望ましいです。
  • 規則正しい生活: 生活習慣病を予防し、血管性認知症のリスクを減らすために、規則正しい生活を心がけましょう。

リハビリテーション

失われた認知機能や運動機能、言語機能の回復を目指すためのリハビリテーションも有効です。脳には失われた機能を他の部分が補う可能性があると言われており、血管性認知症ではリハビリテーションによる改善が得られやすいと考えられています。患者様の状態に合わせて無理なく進めていくことが大切です。

  • 回想法: 昔の思い出を語り合うことで、精神的な安定や認知機能の改善に繋がります。
  • 運動療法: 適切な運動は脳を活性化し、認知機能や運動機能を高める効果が期待できます。
  • リアリティ・オリエンテーション: 自分と自分の居る環境を正しく理解する訓練を通じて、見当識などの認知能力を高めます。
  • 認知機能訓練: 日記、絵、パズル、計算、音読など、脳の働きを高める活動を行います。
  • 音楽療法、園芸療法: 感情の安定化や自発性の向上に繋がります。

受診を強く推奨する症状や状況

以下のような症状や状況が見られる場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 急激な物忘れや認知機能の低下が見られる場合
  • 急にぼーっとすることが増えた場合
  • 手足の麻痺やしびれ、歩行障害などの運動障害が現れた場合
  • 言葉が出ない、呂律が回らないなどの言語障害がある場合
  • 感情のコントロールが難しくなり、すぐに泣いたり怒ったりする場合
  • 意識がもうろうとしたり、失ったりすることがある場合
  • 激しい頭痛を伴い、吐き気や意識障害がある場合(脳出血やくも膜下出血の可能性も考えられます)

よくある質問

Q1. 血管性認知症の家族のケアで気を付けることはありますか?

A1. 血管性認知症の方は、症状が進んでも「ご自身が病気である」という意識が残っていることが多いです。そのため、できないことを責めるのではなく、できたことに目を向け、患者様の気持ちに寄り添ったケアを心がけましょう。ご家族だけで抱え込まず、医療機関や地域包括支援センター、ヘルパーなどと連携し、適切なサポートを受けることが大切です。

Q2. 血管性認知症はなぜ症状が出たり出なかったり変動するのですか?

A2. 血管性認知症で症状が変動するのは、脳の血流の変化によるものです。起床後や食後、体温が高い時や水分が不足している時などは血流が低下しやすいため、認知症の症状が現れやすくなります。また、自律神経の乱れや体調不良の時なども症状が強くなることがあります。日頃から患者様の状態を観察し、症状の変動を記録してみると、症状が現れる時間やタイミングを把握しやすくなります。症状が強く現れている時や体調が悪い時には、無理をさせず、落ち着いた静かな環境で休むなどの対策が重要です。

Q3. 血管性認知症は予防できますか?

A3. 血管性認知症は「予防が可能な認知症」と言えます。原因となる脳卒中のほとんどが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動といった生活習慣病によって引き起こされるためです。これらの生活習慣病を適切に管理し、予防することが、血管性認知症の発症リスクを減らす上で非常に重要です。具体的には、バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、飲酒量の制限、適切な体重管理などが挙げられます。定期的な健康診断や脳ドックも、早期発見・早期治療に繋がります。

Q4. 脳ドックで血管性認知症のリスクが分かりますか?

A4. 脳ドックは、MRIやMRAなどの画像検査を用いて、自覚症状が現れにくい脳の病気(脳卒中や脳腫瘍など)を早期に発見・予防することを主な目的としています。特に、症状のない小さな脳梗塞(無症候性脳梗塞)や脳出血のリスク(微小脳出血)などを発見することができ、これらは血管性認知症の原因となる可能性があります。脳ドックでこれらの異常が早期に発見されれば、適切な対策を講じることで、血管性認知症の発症や進行を予防できる可能性があります。当院でも脳ドックを実施しておりますので、ご検討ください。

Q5. 血管性認知症と診断されたら、生活で気をつけることはありますか?

A5. 血管性認知症と診断された場合でも、生活習慣の改善や適切なリハビリテーションを通じて、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することが可能です。脳卒中の再発予防のためにも、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理は引き続き重要です。また、感情のコントロールが難しくなるなど、症状の特性を理解し、できることを続ける、無理のない範囲で活動するなど、患者様ご本人とご家族が協力して生活を工夫していくことが大切です。

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