高血圧
高血圧について
高血圧とは、血圧が高い状態が慢性的に続く病気です。血圧とは、心臓から全身に血液が送り出される際に、血管の壁にかかる圧力のことを指します。
心臓が収縮して血液を送り出す時に最も高くなるのが「収縮期血圧(上の血圧)」、心臓が拡張して血液を送り出していない状態の時に最も低くなるのが「拡張期血圧(下の血圧)」です。
日本では約4000万人以上が高血圧であるとされ、40歳以上の方では2人に1人が高血圧と言われるほど身近な病気です。 しかし、その中で適切に血圧をコントロールできているのはごく一部に過ぎません。 高血圧を放置すると、血管や心臓に常に強いストレスがかかり、動脈硬化を促進させます。 その結果、脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病、認知症など、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まります。 高血圧をしっかりと治療することで、健康寿命を延ばせることが明らかになっています。
高血圧の基準
診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、またはご自宅で測定した家庭血圧が135/85mmHg以上の場合に、高血圧と診断されます。
血圧は運動や精神的な緊張、ストレスなどによって一時的に変動することもあるため、一度測っただけで「高血圧」と判断するのではなく、継続的な測定が重要です。
高血圧の症状について
高血圧は多くの場合、自覚症状がほとんどありません。 140/80mmHg程度の高血圧では、ほとんどの方が症状を感じないでしょう。 しかし、血圧が急激に200/120mmHgといった非常に高い値になると、頭痛、ふらつき、動悸などの症状が現れることもあります。
症状がないからといって治療しなくて良いわけでは決してありません。 症状がないまま動脈硬化が進行し、脳卒中や心臓病、腎臓病といった重大な病気につながる危険性が高まります。
年間に10万人以上もの人が高血圧が原因で亡くなっているとも言われています。 夜間頻尿、呼吸困難、早朝時の頭痛、下肢の冷感やふらつきなどの症状を認める際は、高血圧による合併症の可能性もありますので、放置せずに受診をご検討ください。
高血圧が考えられる原因
血圧を上げる原因は一つではなく、複数の要因が重なっていることがほとんどです。 高血圧は大きく分けて「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2種類があります。
本態性高血圧
高血圧の90%以上を占めると言われるのが本態性高血圧です。 特定の原因が一つに絞り込めない高血圧で、生活習慣と遺伝的な体質が関係していると考えられています。
- 遺伝的体質: 家族に高血圧の方がいる場合、発症リスクが高まることがあります。これは遺伝的要因と、家族で似たような食生活や生活習慣を送っている環境的要因の両方が考えられます。
- 加齢: 血管の弾力性が失われ、硬くなることで血圧が上昇します。
- 塩分の摂りすぎ: 塩分を摂りすぎると、体内に水分が溜め込まれ、血管内の血液量が増えて血圧が上がります。
- 肥満(メタボリックシンドローム): 肥満の人は高血圧の発症率が2〜3倍高くなると報告されています。
- 運動不足: 運動習慣がないと血圧が上がりやすくなります。
- ストレス: 慢性的なストレスは自律神経の緊張を引き起こし、血圧を上昇させることがあります。
- 喫煙: たばこ1本で血圧が15分以上持続して上がることが分かっています。
- 過剰な飲酒: アルコールは心臓の働きや血管に影響を及ぼし、血圧を上げることがあります。
- 睡眠不足: 睡眠不足も血圧上昇の一因となることがあります。
- 脂質異常症・糖尿病: これらの病気は動脈硬化を引き起こし、血管を硬く細くすることで血圧を上昇させます。
- 気候: 気温の変化なども血圧に影響を与えることがあります。
二次性高血圧
比較的若い方が重症の高血圧である場合や、採血検査で疑わしい所見がある場合など、高血圧の原因となる別の病気が隠れていることがあります。 このように、特定の病気が原因で高血圧になっている場合を二次性高血圧と呼びます。原因となっている病気を治療することで血圧が下がることが期待できます。
主な二次性高血圧の原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 腎臓の病気: 腎臓は血液から余分な水分や老廃物を取り除くフィルターの役割を担っており、腎臓の機能が低下すると血圧が上がることがあります。(腎実質性高血圧、腎血管性高血圧など)
- 内分泌系の病気: 副腎にできる腫瘍などが原因で、血圧を上げるホルモンが過剰に分泌されることがあります。(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群など)
- 心臓や血管の異常: 心臓や血管に異常がある場合も血圧が上がることがあります。
高血圧が引き起こす病気
高血圧を放置すると、全身の血管に大きな負担がかかり、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まります。
- 脳血管の病気: 長い年月高血圧が続くと動脈硬化が進み、脳の血管が硬くなることで、脳出血や脳梗塞といった脳卒中を引き起こすことがあります。
- 心臓の病気: 高い血圧に打ち勝って血液を送り出そうとするため、心臓に負担がかかり、心臓の筋肉が厚くなる「心肥大」や、心不全、狭心症、心筋梗塞などを引き起こすことがあります。
- 腎臓の病気: 腎臓は細い血管が密集した臓器であり、高血圧によって血管がダメージを受けると、腎機能が低下し、慢性腎臓病(CKD)や腎不全に至ることがあります。
- 認知症: 高齢化社会で問題となっている認知症も、高血圧によって引き起こされる病気の一つです。
高血圧の診断と検査について
高血圧の診断は、一度の血圧測定だけで行われるものではありません。 まずは、ご自宅で朝夕の血圧を測定し、ご自身の血圧の状態を把握することが重要です。当院を受診される際にも、ご自宅での血圧測定の記録(血圧手帳など)をお持ちいただくことで、より正確な診断につながります。
高血圧と診断された場合、その高血圧が他の臓器にどの程度影響を及ぼしているかを評価するために、以下のような検査を行います。
- 採血検査・尿検査: 腎臓の働きや、糖尿病、脂質異常症などの合併症の有無を調べます。
- 心電図検査: 心臓の電気的な活動を記録し、不整脈や心肥大の有無などを確認します。
- 胸部レントゲン検査: 心臓の大きさや肺の状態を確認します。
- 超音波検査(心エコー、頸動脈エコーなど): 心臓の動きや血管の動脈硬化の程度をリアルタイムで観察します。
- 脈波測定・ABI検査: 動脈硬化の程度を評価します。
高血圧の治療法について
高血圧の治療は、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善が基本となります。 健康的な生活を送ることで、薬を飲まずに血圧が改善することもあります。
予防・自宅でのケア(生活習慣の修正)
以下の生活習慣の改善は、高血圧の予防にも治療にも有効です。
- 食塩制限: 1日6g未満を目標に、食塩摂取量を減らしましょう。 調味料だけでなく、加工食品や外食に含まれる塩分にも注意が必要です。
- 野菜・果物の積極的な摂取: バランスの取れた食事を心がけ、野菜や果物を積極的に摂りましょう。
- 適正体重の維持: BMI25.0kg/m²未満、できれば22.0kg/m²を目安に減量しましょう。
- 運動療法: 毎日30分以上の軽度〜中等度の有酸素運動(速歩、軽いジョギングなど)を目標に取り入れましょう。
- 節酒: エタノール量で男性20-30mL/日以下を目安に、飲酒量を控えましょう。
- 禁煙: 喫煙は血圧を上昇させ、心臓や血管の病気のリスクを高めます。禁煙と受動喫煙の防止に努めましょう。
- ストレスコントロール: 慢性的なストレスは血圧に影響を与えることがあります。
- 防寒: 気温の変化も血圧に影響を与えるため、体を冷やさないようにしましょう。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合や、重度の高血圧の場合には、降圧剤の内服が必要となります。 降圧薬治療は、一つの薬剤から少量ずつ開始し、血圧の値や副作用に注意しながら調整していきます。 中等度以上の高血圧の場合には、最初から2種類の降圧薬を併用したり、多めの量を用いることもあります。
「一度薬を飲み始めたら、一生やめられない」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。 食事・運動療法の継続によって症状が改善してくれば、薬の量を減らしたり、中止したりすることも可能です。 大切なのは、薬に頼りきりになるのではなく、薬が不要になることを目指して日頃から生活習慣の改善を継続することです。
高血圧治療の目標は、基本的には診察室血圧で140/90mmHg未満です。 ただし、慢性腎臓病や糖尿病をお持ちの方など、動脈硬化のリスクが高い場合には、130/80mmHg未満とより厳しい目標が設定されることがあります。 一方、75歳以上の方では、血圧が下がりすぎることによるリスクも考慮し、140/90mmHg未満が目標値となります。
よくある質問
Q1. 高血圧と言われたのですが、自覚症状がありません。それでも治療は必要ですか?
A1. はい、治療は必要です。高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、ほとんど自覚症状がないまま進行します。 しかし、症状がないからといって放置すると、血管や心臓に負担がかかり続け、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などの重大な合併症を引き起こすリスクが確実に高まります。 健康寿命を延ばすためにも、自覚症状がなくても適切な治療と生活習慣の改善に取り組むことが非常に重要です。
Q2. 病院で測ると血圧が高く、自宅で測ると低いのですが、これは高血圧ですか?
A2. 診察室で血圧が高くなる現象を「白衣高血圧」と呼びます。 逆に、診察室では正常なのに、自宅や職場で血圧が高くなる「仮面高血圧」という状態もあります。 どちらの場合も、放置することで臓器障害のリスクが高まる可能性があります。ご自宅での継続的な血圧測定が、ご自身の正確な血圧状態を把握する上で非常に重要です。当院では、ご自宅での測定結果も考慮し、適切な診断と治療方針をご提案いたしますので、ご相談ください。
Q3. 高血圧の治療は、一度始めたら一生続けなければいけないのでしょうか?
A3. 必ずしもそうではありません。降圧剤の内服を開始しても、生活習慣の改善(減塩、運動、減量など)を継続することで、血圧が安定し、薬の量を減らしたり、中止したりできる可能性もあります。 大切なのは、薬に頼りきりになるのではなく、日頃から生活習慣の改善を心がけ、それを継続することです。
Q4. 若い頃から高血圧と言われているのですが、どのようなことに注意すべきですか?
A4. 若い方で重症の高血圧の場合、特定の病気が原因となっている「二次性高血圧」の可能性があります。 この場合、原因となっている病気を治療することで血圧が改善することが期待できます。 当院では、若い方の高血圧に対して、二次性高血圧の可能性がないかどうかも含め、精密な検査を行い、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療法をご提案いたします。 また、生活習慣の改善は年齢に関わらず重要ですので、継続して取り組むことをお勧めします。
Q5. 高血圧と診断されました。食事で特に気をつけることはありますか?
A5. 最も重要なのは「減塩」です。 1日の食塩摂取量を6g未満に抑えることを目標にしましょう。 加工食品や外食には多くの塩分が含まれているため、成分表示を確認したり、薄味を心がけたりすることが大切です。また、野菜や果物を積極的に摂り、バランスの取れた食事を心がけましょう。