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五十肩(肩関節周囲炎)

五十肩(肩関節周囲炎)について

肩関節は、上腕骨の先端(骨頭)と肩甲骨の関節窩で構成される「球関節」です。この関節は、周囲の筋肉、靭帯、関節唇、関節包(関節を包む袋)によって支えられ、非常に広い範囲で動かすことができます。しかし、加齢に伴いこれらの組織が硬くなったり、炎症を起こしたりすることで、痛みや動きの制限が生じるのが肩関節周囲炎です。

原因の詳細はまだ完全には解明されていませんが、主な要因として「加齢」が挙げられます。重い物を持ったり、腕をひねったりといった特定のきっかけで発症することもあれば、特に思い当たる原因がない場合もあります。運動不足による肩関節の柔軟性低下や、逆に運動のし過ぎによる微細な損傷が引き金となることも考えられます。また、生活習慣の乱れやストレス、ホルモンバランスの変化も影響する可能性があります。

五十肩(肩関節周囲炎)の症状について

肩関節周囲炎の症状は、主に以下の3つの特徴があります。

  • 痛み: 肩から腕にかけての痛み、肩の奥が重く感じる違和感から始まることが多いです。
  • 関節の動きの悪さ(運動制限): 腕が上がりにくくなる、背中に手を回しにくいなど、特定の動作で支障が出ます。
  • 夜間痛: 特に就寝時に痛みが強くなり、寝返りで目が覚める、ひどい場合は眠れなくなることもあります。

肩関節周囲炎は、その進行段階によって症状の出方が異なります。

一般的に「炎症期」「拘縮期」「回復期」の3つの病期を経過すると言われています。

  • 回復期: 痛みが治まり、拘縮が徐々に改善し始める時期です。動かした時の痛みや動かしにくさが改善し、日常生活での支障も減ってきます。この時期に積極的なリハビリテーションを行うことで、肩の動きを早期に改善することが期待できます。
  • 炎症期: 痛みが最も強い時期です。何もしていなくてもズキズキとした痛みが続く「安静時痛」や、夜間に痛みが強くなる「夜間痛」が現れます。腕を上げたりひねったりする動作で強い痛みを感じます。無理に動かすと炎症が悪化し、症状が長引くことがあるため、安静が重要です。
  • 拘縮期(凍結期): 炎症期の痛みが落ち着いてくる一方で、肩関節の動きが悪くなる「拘縮(こうしゅく)」が顕著になります。炎症によって関節包が硬くなり、腕が90°程度も上がらなくなったり、頭を洗う、服を着るなどの日常生活動作に大きな支障が出ることが特徴です。痛みが落ち着いても、動きが悪さがなかなか改善しない時期です。

受診を強く推奨する症状や状況

  • 肩の痛みが数週間以上続いている
  • 夜間の痛みが強く、眠れない日が続いている
  • 腕が上がらない、動かせないなど、日常生活に支障が出ている
  • 強い痛みで吐き気を伴う、意識が朦朧とするなど、いつもと違う症状がある

自己判断で「肩こり」と決めつけず、適切な診断を受けることが大切です。特に、力を入れても自分の力で腕を上げられない場合は、腱板という組織が断裂している可能性もありますので、早めの受診をお勧めします。

五十肩(肩関節周囲炎)の診断と検査について

当院では、患者様の症状を正確に把握し、適切な治療方針を決定するために、丁寧な問診と各種検査を行います。

問診・視診・触診

まず、患者様の具体的な症状(いつから、どのような痛みかなど)を詳しくお伺いします。次に、肩関節の動きの範囲や、圧痛(押すと痛む場所)の有無を確認します。

画像検査

肩関節の痛みや動きの制限を引き起こす疾患は、肩関節周囲炎以外にも複数存在するため、正確な診断のためには画像検査が重要です。

  • X線検査(レントゲン): 骨の状態を確認します。肩関節周囲炎では骨に異常は見られませんが、骨折や石灰沈着の有無を確認するために行います。
  • MRI検査: 放射線を使用せず、強力な磁石と電波を使って、骨だけでなく筋肉、靭帯、半月板、腱板、神経などの軟部組織の状態を詳細に評価できます。腱板断裂や、関節包の炎症・癒着などを詳しく調べるのに非常に有効です。当院では院内でMRI検査が可能です。
  • エコー検査(超音波検査): 超音波を用いて、筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織の状態をリアルタイムで観察します。腱板の状態や、関節内の炎症の有無などを評価できます。体に負担が少なく、繰り返し行える検査です。

これらの検査を組み合わせることで、肩関節周囲炎の正確な診断と、他の疾患との鑑別を行います。

五十肩(肩関節周囲炎)の治療法について

肩関節周囲炎の治療は、疾患の進行度合い(炎症期、拘縮期、回復期)によって治療方針が異なります。当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドの治療計画を立案し、医師と理学療法士が連携して症状の改善だけでなく、症状悪化・再発防止を目指します。

保存療法(手術以外の治療)

肩関節周囲炎の多くは、保存療法が第一選択となります。

炎症期の治療

痛みが強い急性期は、炎症を抑え、安静を保つことが最優先です。無理に動かすとかえって炎症が長引く可能性があります。

  • 安静: 痛みが強い時期は、三角巾やアームスリングで腕を固定することで、安静を保ち、症状の悪化を防ぎます。
  • 薬物療法: 消炎鎮痛効果のある内服薬や湿布などを併用して、痛みを和らげます。
  • 注射療法: 痛みが強く、内服薬や湿布で改善が不十分な場合には、抗炎症作用のあるステロイド剤や局所麻酔薬、ヒアルロン酸などを肩関節内に注射することがあります。これにより、痛みを早く抑え、関節の動きを改善する効果が期待できます。
  • アイシング: 患部が熱を持っている場合は、冷やすことで炎症を抑える効果があります。

拘縮期・回復期の治療

痛みが落ち着いてきたら、硬くなった関節の動きを改善するためのリハビリテーションを積極的に行います。

  • リハビリテーション: 医師の指示のもと、理学療法士がマンツーマンで、運動療法、徒手療法、温熱療法、物理療法、ストレッチ、生活指導などを組み合わせて実施します。肩関節の可動域の維持・拡大、筋力強化、運動機能の回復・維持を目指します。
    • 運動療法: 肩甲骨を含め、首から肩にかけての筋肉を鍛え、柔軟性を高める運動を行います。
    • コッドマン体操: 腕を振り子のようにブラブラと動かすことで、肩関節周囲の筋肉の緊張をほぐし、可動域の改善を目指します。
    • 物理療法: 電気、光線、超音波、熱などの物理エネルギーを利用して、炎症や痛みを和らげ、回復を促進します。

リハビリテーションは、自宅での体操と合わせて行うことで、より効果が期待できます。ただし、自己判断での過度な負荷や無理な動きは、痛みや炎症の再発原因となるため、必ず医師や理学療法士の指導のもと、正しいフォームと手順で行うことが大切です。

手術療法

保存的治療を行っても症状が改善せず、日常生活に著しい支障をきたしている場合には、手術が検討されることがあります。

  • 徒手的肩関節授動術(サイレントマニピュレーション): 麻酔をかけた状態で、医師が肩関節を大きく動かし、硬くなった関節包の癒着を剥がす手術です。メスを使わず、局所麻酔で行うことができ、日帰りでの実施も可能です。
  • 鏡視下肩関節授動術: 関節鏡と呼ばれる小さなカメラと手術器具を挿入し、硬くなった関節包の一部を切除して関節の動きを改善する手術です。数ミリ程度の小さな切開で行い、全身麻酔で実施されます。

手術後は、関節が再び硬くならないように、積極的にリハビリテーションを行います。当院では、手術が必要と判断された場合は、連携医療機関にご紹介します。術後のリハビリテーションは当院で可能です。

よくある質問

Q1. 五十肩はどのくらいで治りますか?

A1.患者様の状態には個人差がありますが、一般的には半年から1年程度が目安とされています。症状が軽い段階から適切な治療やリハビリテーションを行うことで、治療期間を短縮し、症状の悪化を防ぐことができます。

Q2. 五十肩のときに、日常生活で注意することはありますか?

A2.日常生活では以下に注意してください。

  • 強い痛みがあるときは無理に動かさない: 特に炎症期は、無理せず安静にすることが重要です。
  • 痛みのある肩を下にして寝ない: 夜間痛が強い場合は、患部に負担がかからないよう、痛みのない方を下にして寝るようにしましょう。
  • 自己判断でマッサージを受けない: 五十肩の痛みを「肩こり」と勘違いしてマッサージを受けると、かえって症状が悪化する場合があります。痛みに加えて「可動域制限」がある場合は、まず医療機関を受診してください。
  • 肩を冷やさない: 肩を冷やすと血流が悪くなり、痛みが悪化することがあります。入浴で温めたり、肩掛けをするなどして、日常的に肩を冷やさないようにしましょう。

Q3. 五十肩の予防法はありますか?

A3.完全に発症を予防することは難しいですが、症状の悪化を防ぎ、再発を予防することは可能です。

  • 正しい診断を受ける: まずは医療機関で正確な診断を受け、適切な病期に合わせた対応をすることが重要です。
  • 上半身の筋肉を使った運動: ウォーキングで腕を振る、ストレッチ、ラジオ体操など、日頃から肩甲骨を含めた肩関節周囲の筋肉を動かすようにしましょう。ただし、既に痛みがある場合は、無理な運動は避け、速やかに医療機関を受診してください。
  • 入浴で温める: 湯船に肩まで浸かり、肩関節の血行を良くしましょう。
  • 姿勢や生活習慣の改善: 猫背は肩に負担をかけるため、正しい姿勢を意識しましょう。睡眠不足や栄養バランスの偏りも血行不良を招くため、規則正しい生活を心がけることも大切です。
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