外傷(骨折、捻挫、打撲、肉離れなど)
疾患・症状の概要
外傷とは、身体に直接的な力が加わることで引き起こされる、皮膚、筋肉、骨、内臓などの損傷の総称です。日常生活での転倒、スポーツ中のアクシデント、交通事故などが主な原因として挙げられます。外傷の種類や程度は多岐にわたり、軽度な擦り傷や打撲から、骨折、靭帯損傷、内臓損傷など、重症なケースでは命に関わることもあります。適切な処置を施さないと、感染や出血、機能障害などの合併症を引き起こす可能性もあります。
外傷の症状について
外傷によって引き起こされる症状は、傷の種類や程度によって異なりますが、一般的に以下のものが挙げられます。
- 出血: 傷口から血液が出ることがあります。
- 腫れや痛み、熱感: 筋肉や骨に損傷がある場合には、その部位が腫れたり、強い痛みを伴ったり、熱感を感じたりすることがあります。
- 動かせない・変形: 関節の損傷や骨折などによって、身体の一部が動かせなくなることがあります。また、関節がおかしな方向に曲がっているなど、変形が見られることもあります。
- 内出血: 打撲などでは、皮膚の下に内出血が見られることがあります。
- しびれ・感覚の鈍さ: 神経が損傷している場合、手足のしびれや感覚が鈍くなることがあります。
- 水疱の形成: やけどの場合、水ぶくれができることがあります。
特に注意が必要な症状
- 頭部外傷: 意識障害やめまいを伴う頭部外傷は、速やかに救急搬送を依頼してください。
- 高エネルギー外傷: 多発肋骨骨折や骨盤骨折など、強い力が加わったことによる重症な外傷も、緊急の対応が必要です。
- 指の切断や眼球のけが、歯の損傷: これらの場合は、それぞれ専門の大病院救急外来、眼科、歯科・口腔外科を受診する必要があります。
外傷の考えられる原因
外傷の主な原因は、身体に直接的な外力が加わることです。具体的には以下のような状況で発生します。
- 転倒・転落: 日常生活やスポーツ中にバランスを崩して転倒し、身体を地面や物に打ちつけることによる打撲や骨折。
- 衝突・接触: スポーツや交通事故など、人や物と衝突することで発生する様々な損傷。
- 過度な負荷: スポーツなどで筋肉や関節に無理な力がかかることによる捻挫、肉離れ、靭帯損傷。
- 鋭利な物による接触: ガラスや刃物などによる切り傷。
- 高温の物による接触: やけど。
- 動物による咬傷: 犬や猫などに噛まれたことによる傷。
- 虫刺され: 蚊、ダニ、ハチなどの虫に刺されることによる皮膚の炎症。
これらの外力によって、皮膚、筋肉、腱、靭帯、関節、骨といった様々な組織が損傷を受けます。特に、関節に不自然で強い外力が加わると、関節を支える靭帯が伸びたり切れたりする「捻挫」が起こり、骨に直接的な衝撃が加わると「骨折」に至ることがあります。
外傷の診断と検査について
外傷の診断は、傷の場所や程度、周囲の状態を詳しく調べる身体検査が基本となります。これに加えて、以下のような画像検査や血液検査を組み合わせて、正確な診断を行います。
- X線検査(レントゲン): 骨折や脱臼、骨の損傷の有無を調べるために最も一般的に行われる検査です。捻挫だと思っていても、剥離骨折などが隠れていることがあるため、必要に応じて確認します。
- MRI検査: 筋肉、靭帯、腱、半月板、軟骨、神経などの軟部組織の損傷を詳しく調べるのに非常に有効です。椎間板ヘルニアや靭帯損傷、腱板断裂などの詳細な評価が可能です。
- 超音波検査(エコー): 靭帯損傷、腱板断裂、肉離れ、腱鞘炎など、レントゲンでは捉えきれない軟部組織の状態をリアルタイムで観察できます。関節の炎症や微細な骨折の評価にも用いられます。
- CT検査: 特に骨折の詳細な評価(微細な骨折、骨折の形状、骨癒合の状態など)に有用で、脊椎や関節の状態を立体的に把握することも可能です。脳出血など頭部の外傷確認にも使用されます。
- 血液検査: 感染症が疑われる場合や、出血の程度を調べるために行われることがあります。
外傷の治療法について
外傷の治療は、傷の程度や種類によって異なりますが、一般的には以下の方法が選択されます。
- 応急処置(RICE療法)
- Rest(安静): 負傷した部位を固定し、安静に保ちます。無理に動かすと痛みが増したり、炎症が広がったりする可能性があります。
- Icing(冷却): 患部を氷や氷水で冷やします。これにより血管が収縮し、痛みや腫れ、内出血を抑える効果があります。凍傷を防ぐため、タオルなどで包んで20~30分冷やし、1~2時間あけて繰り返します。
- Compression(圧迫): 包帯などで患部を軽く圧迫し、腫れや内出血の広がりを抑えます。ただし、締め付けすぎると血行不良になるため、きつく感じたらすぐに緩めましょう。
- Elevation(挙上): 負傷した部位を心臓より高い位置に保つことで、患部に血液やリンパ液がたまるのを防ぎ、腫れや痛みを軽減します。
- 傷口の処置
- 出血の止め方: 圧迫止血法や包帯などを用いて止血します。
- 傷口の清潔化: 傷口に付着している汚れや異物を取り除き、消毒します。
- 縫合: 深い傷や切り傷などの場合には、傷口を縫合することがあります。神経や腱、血管が断裂している場合は、緊急の縫合処置が必要になることもあります。
- 骨折・脱臼の治療
- 骨折部の整復: 骨折の場合には、骨の位置を正しく合わせ、ギプスや装具などを用いて固定します。手術が必要な場合は、手術を行います。
- 脱臼の整復: 脱臼した関節を正しい位置に戻します。
- 超音波骨折治療器: 骨折の治癒を促進する超音波治療器を導入している場合があります。
- 薬物療法
- 疼痛管理: 痛みがある場合には、痛み止めや鎮痛剤などを用いて痛みを軽減します。
- 抗生物質: 傷口の感染が疑われる場合や、破傷風などの感染症予防のために抗生物質が処方されることがあります。
- リハビリテーション
- 傷が治った後には、筋力低下や運動機能の障害が残ることがあります。そのため、筋力トレーニング、機能回復トレーニング、ウォーキング練習などを行い、機能を回復させることが必要です。理学療法士の指導のもとで行われます。
受診を強く推奨する症状や状況
以下のような症状や状況が見られる場合は、早急に医療機関を受診してください。
- 出血が止まらない、または多量に出血している場合。
- 激しい痛みや腫れがあり、我慢できない場合。
- 患部が変形している、または動かせない場合。
- 頭部、胸部、腹部を強く打撲した場合(脳や内臓に異常がないか確認が必要)。
- 切り傷が深く、神経や腱、血管に損傷が及んでいる可能性がある場合。
- やけどの範囲が広い、水疱ができている、または痛みがなく皮膚が白くなっている場合(重度のやけどの可能性)。
- 動物に噛まれた場合(感染症のリスクがあるため)。
- 虫刺されで、血圧低下や意識消失など、強いアレルギー反応(アナフィラキシーショック)の症状が見られる場合。
- ただの打ち身だと思っていても、痛みが長く続く、または悪化している場合。
- 捻挫だと思っても、腫れがひどい、足がつけないなど、骨折や重度の靭帯損傷の可能性が否定できない場合。
- レントゲン検査を行わずに「骨折はありません」と言われたが、痛みが引かない場合(不顕性骨折の可能性もあるため、再受診を推奨)。
「これくらい大丈夫だろうか」とご自身で判断せず、どんな些細なことでもお早めにご相談ください。
ご自宅でできる対処法やセルフケア
外傷が起きてしまった際、医療機関を受診する前に行える応急処置としてRICE療法が基本です。
- RICE療法の実践:
- Rest(安静): 負傷した部位を動かさず、安静に保ちます。手近なテープや厚紙、タオルなどで固定することも有効です。
- Icing(冷却): 氷のうや冷たいタオルなどで患部を冷やします。血管を収縮させ、腫れや内出血を抑え、痛みを和らげます。凍傷を防ぐため、直接氷を当てず、ビニール袋に入れた氷をタオルで包んで使用し、20〜30分冷やしたら一度外し、1〜2時間後に繰り返します。
- Compression(圧迫): 包帯などで患部を軽く圧迫し、腫れや内出血の広がりを抑えます。ただし、締め付けすぎると血行不良になるため、きつく感じたらすぐに緩めましょう。
- Elevation(挙上): 負傷した部位を心臓より高い位置に挙げることで、患部に血液やリンパ液がたまるのを防ぎ、腫れや痛みを軽減します。
- 傷口の清潔保持: 擦り傷などの浅い傷でも、細菌感染を防ぐために、清潔な水で汚れを洗い流し、清潔なガーゼなどで保護しましょう。
- 市販薬の活用: 痛みがある場合は、市販の鎮痛剤や湿布薬の使用も検討できますが、用法・用量を守り、症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
これらの応急処置は、あくまでも医療機関を受診するまでのつなぎの措置です。自己判断で治療を行うことは危険であり、症状が続く場合は、必ず医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
よくある質問
Q1. どのような症状の時に受診すれば良いですか?
A1. 転倒、スポーツ中のアクシデント、交通事故などで身体に痛みや腫れ、変形、動かしにくさなどがある場合は、ご受診ください。特に、出血が止まらない、激しい痛みがある、頭部を強く打った、患部が変形しているといった場合は、早急な受診をおすすめします。どんな些細なことでも、不安な症状があればお気軽にご相談ください。
Q2. 応急処置として自宅でできることはありますか?
A2. 医療機関を受診するまでの応急処置として、RICE療法が有効です。Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)を実践することで、痛みや腫れを抑えることができます。具体的な方法は本文中でもご紹介しておりますので、ご参照ください。ただし、RICE療法はあくまで応急処置ですので、症状が続く場合は必ず医療機関を受診してください。
Q3. レントゲンで異常がなくても痛みが続くのですが、どうすれば良いですか?
A3. レントゲン検査で骨折などの異常が見つからなくても、痛みや腫れが続く場合は、靭帯損傷や肉離れ、不顕性骨折など、レントゲンでは診断が難しいケースも考えられます。当院では、必要に応じてMRI検査や超音波(エコー)検査など、より詳細な検査で原因を特定し、適切な治療法をご提案いたします。痛みを我慢せず、再度ご相談ください。