disease

慢性疼痛

慢性疼痛について

「慢性疼痛」とは、怪我や病気が治った後も痛みが続いたり、原因がはっきりしないのに3ヶ月以上痛みが継続する状態を指します。通常の痛み止めが効きにくい場合もあり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。日本では約2000万人、つまり5〜6人に1人が慢性疼痛を抱えていると言われています。

痛みは、身体が危険を知らせるサインとしての「急性疼痛」と、その役割を終えてもなお続く「慢性疼痛」の2種類に分けられます。急性疼痛は怪我や炎症が治れば自然と消えるものですが、慢性疼痛は痛みが長期化することで、神経の伝達システムに変化が生じ、痛みに過敏な状態になってしまうことがあります。痛みを我慢し続けると、「痛みの悪循環」に陥り、さらに痛みが悪化することも少なくありません。

慢性疼痛の症状について

慢性疼痛の主な症状は、原因がはっきりしない鈍い痛みが続くことです。痛みの部位が特定しにくいことも多く、検査をしても異常が見つからないケースも少なくありません。

また、持続的な痛みは身体だけでなく精神的な負担も大きく、以下のような症状を引き起こすことがあります。

  • 睡眠障害:痛みのために眠れない、熟睡できない
  • 食欲不振、体重減少:痛みによるストレスや自律神経の乱れ
  • 抑うつ、不安感:精神的なストレスが増大し、気分が落ち込む
  • 活動性の低下、引きこもり:痛みのために外出や活動を避けがちになる

慢性疼痛では、普段の鈍い痛みに加えて、突然激しい痛みが短時間現れる「突出痛(とっしゅつとう)」と呼ばれる症状を伴うこともあります。これは予測が難しいのが特徴です。

慢性疼痛の主な原因

慢性疼痛の原因は多岐にわたり、一つに特定することが難しい場合があります。

  • 急性の痛みの慢性化:怪我や病気による急性期の痛みが適切に治療されずに放置された結果、痛みが慢性化してしまうことがあります。
  • 血行不良:痛みが長く続くことで患部の血行が悪くなり、痛みを引き起こす物質が蓄積することで慢性的な痛みにつながります。
  • 慢性疾患:がん、糖尿病、関節炎、線維筋痛症などの慢性的な病気が原因となって痛みが続くことがあります。
  • 神経の損傷や異常(神経障害性疼痛):感覚神経が傷ついたり、その働きに異常が生じることで発生する痛みです。神経が過敏な状態になり、通常の痛み止めが効きにくい傾向があります。
  • 心理的・社会的要因:ストレス、不安、抑うつなどが痛みを悪化させたり、慢性化させたりすることがあります。「痛い」という意識が過剰になり、不活発になったり、引きこもりがちになったりすることもあります。このような場合、「慢性疼痛症候群」と呼ばれることもあります。特に運動器の慢性疼痛は、身体的な問題だけでなく、意欲の低下や生活への不安といった心理的・社会的要因が複雑に絡み合って悪化することが多くあります。

慢性疼痛の診断と検査について

当院では、患者様の痛みの原因を正確に特定するために、詳細な問診と各種検査を組み合わせて診断を進めます。

  • 問診:痛みがある場所、いつから始まったか、どのような痛みか、日常生活で困っていることなどを詳しくお伺いします。痛みの感じ方だけでなく、患者様を取り巻く生活環境や精神的な状態についても考慮し、包括的に評価します。
  • 身体診察:痛む部位の状態、動きの範囲、神経の状態などを確認します。
  • 画像検査:
    • レントゲン検査(X線検査):骨折の有無、骨の変形、関節の状態などを確認します。当院ではデジタル撮影により、画像を即座に確認し、その日のうちに説明が可能です。
    • CT検査:骨の詳細な評価(微細な骨折、骨折の形状など)や、脊椎や関節の状態を立体的に把握するのに有用です。脳の出血や腫瘍の発見にも役立ちます。
    • MRI検査:レントゲンやCTでは分かりにくい椎間板ヘルニア、靭帯・半月板損傷、腱板断裂、軟骨の状態、神経の圧迫などを詳細に評価できます。脳梗塞や脳腫瘍などの早期発見にも有効です。 当院では、MRI検査は午前中のご相談で当日中に実施できる場合があり、不安を早く解消したいというニーズにお応えします。
    • エコー検査(超音波検査):筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織の状態や、関節の炎症などをリアルタイムで観察します。放射線を使用しないため、体に負担がなく、繰り返し行うことができます。
  • 神経機能検査:
    • 神経伝導速度検査(NCS)、筋電図(EMG):手足のしびれや力の入りにくさの原因を調べるために、末梢神経に電気刺激を与えたり、筋肉の電気活動を記録したりする検査です。神経がどこで、どの程度障害されているかを評価します。
    • 脳波検査(EEG):てんかんや意識障害など、脳の電気的な活動に異常がないかを調べます。
  • 認知機能検査(MMSE、MoCAなど):物忘れの程度など、脳の認知機能の状態を評価するための検査です。

なお、必要と判断した場合には、連携する専門医療機関へのご紹介も積極的に行い、患者様にとって最適な医療を提供できるよう努めます。例えば、精神的な要因が強く疑われる場合は、精神医学的な評価のために専門医をご紹介することもあります。

慢性疼痛の治療法について

慢性疼痛の治療は、痛みをゼロにすることだけでなく、痛みをコントロールしながら充実した日常生活を送れるようにすることを目標とします。当院では、患者様一人ひとりの状態や希望を伺いながら、最適な治療法を組み合わせて提供します。

薬物療法

痛みの悪循環を断ち切り、痛みを軽減するために薬物療法は不可欠です。

  • 消炎鎮痛薬:炎症を抑え、痛みを和らげます。
  • ステロイド薬:強い抗炎症作用により、痛みを軽減します。
  • 神経障害性疼痛治療薬:神経が過敏になっている状態を鎮め、痛みを和らげます。
  • 抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SNRIなど):痛みを抑える脳の働き(下降性疼痛抑制系)を活性化させる作用があり、神経障害性疼痛や慢性頭痛にも用いられます。
  • 弱オピオイド製剤:痛みの伝達を抑える作用があります。 症状や痛みの種類に応じて、これらの薬を適切に組み合わせたり、少量から始めて調整したりします。

注射療法

痛みの部位に直接アプローチし、速やかに痛みを和らげることを目指します。

  • 神経ブロック注射:炎症のある神経やその周辺に局所麻酔薬を注入し、痛みの伝わる経路を遮断します。血流改善や筋肉のこわばり解消にもつながります。
  • トリガーポイント注射:痛みを発する「トリガーポイント」に局所麻酔薬を注入し、痛みを緩和します。肩こりや筋膜性疼痛に有効です。
  • 関節注射:関節内にヒアルロン酸ナトリウムやステロイド薬を注射します。ヒアルロン酸ナトリウムは関節の動きを滑らかにし、ステロイド薬は関節の炎症を抑えます。
  • ハイドロリリース:超音波ガイド下で、筋肉と筋肉の間、神経と筋肉の間などに生理食塩水などを注入し、癒着を剥がして滑走性を改善することで痛みを緩和します。

リハビリテーション・運動療法

痛みをコントロールしながら、身体機能を改善し、日常生活の質を高めることを目指します。
当院のリハビリテーション部門では、専門スタッフ(理学療法士)が以下の流れでサポートします。

  • 身体評価:痛みの原因となる動作や姿勢を評価します。
  • 治療:ストレッチやマッサージで筋肉や関節の柔軟性を高め、血流改善を図ります。
  • コンディション改善:身体の可動域を広げ、動かしやすい状態へと導きます。
  • セルフケア指導:筋力トレーニングや体力づくり、正しい姿勢の意識、生活習慣の見直しなど、ご自宅で継続できる対処法を具体的に指導します。 通院でのリハビリだけでなく、患者様ご自身の努力による運動継続が、痛みの改善と再発予防に非常に重要です。

生活習慣の改善・セルフケア

日常生活でのちょっとした工夫も、慢性疼痛の緩和に繋がります。

  • 正しい姿勢を意識する:寝起き、椅子の高さ、車の運転、作業姿勢などに注意するだけでも痛みの軽減が期待できます。
  • ストレス解消:食事や睡眠をしっかりとり、息抜きや趣味の時間を持つなど、ストレスを溜めない工夫も大切です。ストレスは痛みの感じ方を強めると言われています。
  • 適度な運動:痛みがコントロールできる範囲で、体を動かすことは痛みの軽減に繋がります。無理のない範囲で積極的に体を動かしましょう。
  • 市販薬の使用目安:軽い痛みに対して市販の鎮痛剤を使用することもできますが、長期的な使用や効果が得られない場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。

よくある質問

Q1. 慢性疼痛は完治しますか?

A1. 慢性疼痛は、痛みをゼロにすることが難しい場合もありますが、適切な治療とセルフケアによって、痛みをコントロールし、日常生活の質を大幅に改善することは可能です。痛みの悪循環を断ち切り、痛みに過敏な状態から抜け出すことを目指します。

Q2. 痛い時は安静にすべきですか?

A2. 急性期の激しい痛みがある場合は安静が必要なこともありますが、慢性疼痛においては、過度な安静はかえって痛みを悪化させる可能性があります。痛みがコントロールできる範囲で、適度な運動を続けることが大切です。無理のない範囲で体を動かすようにしましょう。

Q3. 慢性疼痛の治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

A3. 慢性疼痛の治療期間は、痛みの種類、原因、個人の状態によって大きく異なります。短期間で改善する方もいれば、数ヶ月から年単位の治療が必要な方もいらっしゃいます。根気強く治療を続けることが重要です。

Q4. どのような症状が出たら受診を考えるべきですか?

A4. 3ヶ月以上痛みが続いている場合や、通常の痛み止めが効かない、痛みのせいで日常生活に支障が出ている(眠れない、食欲がない、気分が落ち込むなど)、手足のしびれや麻痺を伴う、激しい痛みが突然現れた、といった場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

Q5. 子供や高齢者の慢性疼痛で注意することはありますか?

A5. 小児の場合、痛みをうまく伝えられないことがあるため、保護者の方が注意深く観察し、早めに医療機関を受診することが大切です。高齢者の場合、複数の疾患を抱えていることが多く、薬の副作用や持病との兼ね合いに注意が必要です。また、骨粗鬆症による圧迫骨折など、高齢者特有の痛みの原因も考慮する必要があります。

Q6. ストレスが痛みに関係することはありますか?

A6. はい、ストレスは慢性疼痛と深く関連しています。精神的なストレスが大きいほど、痛みの感じ方が強くなると言われています。痛みの治療と並行して、ストレスマネジメントも重要になります。当院では、必要に応じて心身両面からのアプローチを検討します。

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